「えっ?」
「本当に転校してきた…… ってことなのかな?」
 そう言えば含みのある言い方をしていた。
 最初から転校の予定だったのかもしれない。
 マミがたずねた。
「どうなるの?」
「どうなるって…… 私にもわからないよ」
 昨日の今日で、いきなり仲間とはいかないだろうし。
 どう距離をとればいいのか分からない。
 いや、違う?
「転校とかそういう話じゃなかったら?」
「どういう意味? 制服着てきてるし」
「あれはミハルが譲ったものでしょう?」
「そうだけど。だから、どういう意味?」
「例えば転校じゃなくて、講師としてくるとか、副担とか」
「年齢的に教師や講師じゃないでしょう? まして副担はオレーシャがついたばかりだし、考えられないよ」
「留学生とか?」
「……いや、それならそもそも転校生とかわりないよね」
 マミのいうことはもっともだった。
 なんだろう、チアキが同じクラスに転校してくることがどうしても受け入れ難い。
「うちのクラスに来なくても……」
「それは言えてる」
 マミは同意してくれた。
 そのまま佐藤とチアキは教室に入ってきた。
 いつもの転校生とは違った雰囲気が教室に走った。
 それは先にバスでチアキの姿を見ているからだった。
「あれだ……」
「今朝、|白井(しろい)といたやつ」
「館山とどこが違うんだよ。そのものじゃね?」
「カチューシャがないだけ」
「そうか」
「有・無でよくね?」
 そう姿形、声はそっくりだ。何故か髪型も似ているせいで、見分けがつかない。カチューシャをしているのがミハル、そういう気持ちはわかる。私もまだ分かっていない。
「今日も転校生を紹介する」
「いきなり?」
 どこからか突っ込みが入る。
「今日は特に連絡事項はないから転校生を紹介する」
 佐藤はすこしいらだち気味だった。
「まずは名前、全員タブレットを確認して」
 目の前にタブレットに表示される。
『逆井千秋(さかさい ちあき)』
 また教室がざわめく。
「館山、じゃないのか?」
「ミハルの姉妹とかじゃないの? 名字違うって親戚?」
「双子の親違い…… ってありかよ?」
「ぎゃくい、とか、さかい、じゃないの?」
 教室のざわめきを予測していたように、担任の佐藤がうんざり顔で言う。
「なんでもいいからみんな黙ってくれ…… では、これから本人に挨拶と自己紹介をしてもらうから」
 チアキが真ん中へ進んだ。
「さかさいちあきです。よろしくおねがいします。前の学校ではバレー部でセッターやってました」
 なんか、昨日からの印象とは違う雰囲気だった。
 私を見つけると、一瞬目がつり上がった気がした。
「この学校で部活をやるかはまだ決めていません。よろしくお願いします」
 佐藤がチアキの様子をみながらタブレットを操作した。
「ということなので、仲良くしてやってくれ。寮の部屋はもう決まっているようなので、後で連絡する。それから、ミハルと同様、白井。面倒見てやってくれ」
「は?」
 瞬間的に湧き上がる怒りが、思わず口をついて出てしまった。
「白井聞こえなかったのか?」
 強い命令口調。
「わかりました」
「ご指名だそうだ」
「へ?」
 どういうことだ…… 嫌われるなら分かるが、チアキ本人からのご指名とは。
「よろしくぅ〜」
 チアキが媚びたような声を出した。
「ちょっとまて、質問タイムがある」
 私の方に歩きはじめたチアキを呼び戻した。
「それじゃあ、指名するから質問するように」