質問する権利が回ってきた者は、タブレットの画面がフラッシュする。
「おっ!」
 まってましたとばかりに立ち上がった男子は、そのものズバリを聞いた。
「はい、私は梶原俊樹と言います。さかさいちあきさん、あなたは名字が違いますが、たてやまみはると双子ですか?」
「双子なわけないでしょ。こんなそっくりな人、初めて会ったわ」
 はぐらかすのかと思ったら、頭から否定した。
 これで今日の血液検査で双子だとでたらどうする気なのか。
 担任はスパッと次に切り替えた。
「じゃ、次」
「はい、佐々木美奈子です。なぜキミコがいいんですか? ババア声が好きなんですか? ってことは佐津間にライバル宣言したも同じですが、そこんところどう思いますか?」
 なんでそんな言い方をするんだ。
 ババア声は余計だし、佐津間の名前を出すのも余計だ。
「別に理由はないわ。知らない人に迷惑かけるより知っている人の方がよかったのよ。で、佐津間って…… あれか。白井を好きだって体中でアピールしているアイツのことね。私は別に白井を好きじゃないからライバルにはならないわよ。以上」
 指さされた佐津間はどこかあさっての方向を見ている。
「最後」
 タブレットがフラッシュする。
「あ…… す、鈴木葵です。し、質問は…… その…… あの…… すきな食べ物はなんですか?」
「でたよ……」
「またかよ」
「小学生的質問」
「しいてあげるならたこ焼きね」
「あげたよ。誰かと同じだよ」
 そうだ…… この質問と答えは記憶にある。
 佐津間の時も同じ質問で…… 同じ答えだ。
「本人すっとぼけてるけどな」
「だから小学生なのかってこと」
「以上。座席は白井の後ろ」
 言うやいなやチアキはスタスタと私の方に歩いてきて、両手を上げて止めた。
「ほら?」
 ハイタッチでもしたいのか? 私も手をあげると、バチーンと大きな音を立ててハイタッチした。
「よろしくっ!」
「あ、言い忘れてた」
 去りかけた佐藤が足を止めた。
「いままで使ってなかったけど、今日から出席と取る時にはタブレットの指紋センサー使うようにしてくれ」
 そうか、これだけ人数が増えてきて、双子のような|娘(こ)もいるのだから、代返防止としては指紋認証をするしかないんだろう。このタブレットはそもそもそういう目的で一人一人に渡しているのだ。



 とにかくチアキは落ち着きがないというか、しょっちゅう突っついてきて私の勉強の邪魔をした。
「(どうしたの?)」
「(これどうしたらいいの?)」
 タブレットをこちらに向けるが、画面が光ってよく見えない。
 頭を上げ下げして、画面を見ると、タブレットにはシステムメッセージが出ていた。
「(スワイプで引っ込められない?)」
「(それぐらいわかるわよ。ダメだから聞いてるんじゃない)」
「(内容は?)」
「(システムアップデート中って)」
「えっ!」
 社会科の教師が私を睨みつけた。
「なんですか?」
「チア…… |逆井(さかさい)さんのタブレットがシステム更新始めちゃったらしくて」
「今日転校してきたんだっけ。佐藤先生が予めアップデートして置けば良かったのに…… 予備のタブレットを持ってくるから、そっちを使いなさい」
 教師はタブレットに予備を持ってくるよう話しかけている。
「逆井さん。困ったことがあったら私にいいなさい。さっきから|白井(しろい)さんをつっついているのは見えてますよ」
「佐藤先生が白井さんに面倒みてもらえって言ってました」
「では私が訂正します。授業中は授業の担当の先生に言ってください」
「はい」
 ナイス! ナイスだよ、中里先生、これでつっつかれなくなるよ。
 しばらく先生の講義が進むと、事務員の方がタブレットを持ってきて中里先生に渡した。
 先生は軽く設定を確認して、チアキに渡す。
「アップデート終わるまではこっちを見ておいて」
「はい」
 まるで真面目な生徒のような返事をする。私をつっついてくる、ふざけた本性はどこに隠した?
 先生が前を向いて戻る瞬間、指で目と口を広げて思い切り変な顔を作ってみせる。
 一瞬、驚いてよくわからなかったが、笑わそうとしていると気づくと、それが面白くて笑ってしまった。
「白井っ」