「……」
「けど、扉がついているものはことごとく破棄されているか、そこから〈転送者〉が出てきて酷いことになっているはずよ」
 私は今まで見てきた現実から、水をかけるようなことを言ってしまった。
「まあ、けど……」
 マミが言った。
「まあ、けど、何?」
「宿泊させるつもりなんだからある程度のレベルは保っていると考えてもいいとおもうけど」
 私達は、そんな感じに、〈鳥の巣〉の中にある豪華なホテルと、プールのことを話しながら教室へ戻った。
「館山、ちょっと」
 廊下を歩いていると、ミハルが担任の佐藤に呼び止められた。
「……」
「時間がない」
 佐藤は、急にミハルの腕を取って、教室でも、職員室へ行くのでもない渡り廊下へミハルを引っ張っていった。
「ミハル!」
「……」
 私がミハルが行ってしまった方を見ていると、マミが言った。
「何をしているか、見てくる?」
「……」
「なんか怪しい。そう思ってるんでしょ?」
 私はうなずいた。
「それ何の話し?」
 チアキが言った。
「関係ないから、教室に帰ってて」
「関係ないけど、キミコが教室に案内してよ」
「ここまで来たんだから分かるでしょ?」
「私が一緒にいくから大丈夫でしょ?」
 マミがウインクした。
「キミコは用事を思い出したのよ」
 マミはチアキの手を引いて教室へ歩いていく。
 私は渡り廊下の金属の扉をゆっくり開け、様子をみながらミハルと佐藤の行方を追った。
 渡り廊下にはすでに人影はない。
 反対の校舎の扉まで走り、ドアノブをゆっくり回して扉を開ける。
 暗い。渡り廊下と明るさの違いで何も見えない。
 渡り廊下の先には、階段の踊り場があると思っていたのだが、もしかしたらここは特別な部屋でもあるのだろうか。
 もう少し扉を開けて、こちら側の光を入れる。
「はぁはぁはぁ……」
 中から吐息が聞こえる。
 ミハルのもののようにも思える。
「どうだっ!」
 佐藤の声だ。
「はぁっ、はぁっ……」
 佐藤の呼吸も荒い。
 いや、どんなことになっていてもこれはマズいだろう。私は意を決して中に入った。
「何してんの!」
 扉を閉めてしまって、部屋の中は真っ暗になっていた。
 そうだ、壁沿いに歩けば……
「!」
 灯りのスイッチを入れた。
 目の前には、肩車をした佐藤、乗っているミハルの二人がいた。
 完全に男女の交わりをしてしまっていると思っていた私は、自分が恥ずかしくなった。
 しかし、暗闇で肩車する先生と生徒も充分怪しい。
「何やってんですか?」
「次の授業の準備を館山に手伝ってもらおうと思ったんだが、なぜか防火シャッターが閉まっていて」
「解放するためのスイッチが上にあるからって」
 ミハルの上の方を見ると確かにスイッチボックスのようなものはある。
「あれ?」
「そ、そうだ…… 館山、下ろすぞ」
 ミハルを下ろすと、佐藤が改めてそのスイッチを見つめた。
「蓋があるのか」
「その前に灯りをつけるべきでしたね」
 私が言うと、佐藤は項垂れた。
「その通りだな」
「防火シャッターなら事務室から遠隔で開けられそうだし」
「そうか」
 慌てて佐藤は連絡をいれる。
 すると、モーター音がしてシャッターが巻き上がっていく。
「白井も手伝ってくれ」
「はい」