私は思わず突っ込んだ。
「そんなことあるかい!」
「けど、あれやこれやをそういう誤解のしかたするんだ、って少し関心しちゃった」
「心配したんだよ」
「ありがとう」
 ミハルは嬉しそうだった。
 その顔を見て、私は心配が無駄ではなかったと思って嬉しくなった。
「そういうことは絶対しないから。今度からは私を信用してね」
「うん、約束する」
 私とマミとミハルはお互いの小指を絡めて指切りをした。
「もういいかしら?」
 そう言ったのはチアキだった。つまらなそうな表情でこちらをみている。
「何、チアキ?」
「私がここにいること知ってる?」
「知ってるよ?」
「何も疑問に思わないの?」
「どうして? 転校生なんでしょ?」
 つまらなそうな顔が、起こったように変化してきた。
「私がここにいる訳は……」
 コンコン、とノックの音がした。
「はい」
 マミがむかえにいき、ドアを開ける。
「えっ? 業者? なんですか?」
 私はチラッとチアキを見た。
 体が反り返るぐらいに胸をはり、両手を腰にあてていた。
 今にも鼻から『ふんっ』と息をはきそうだ。
「みんな、部屋から一旦出てだって。業者の方が作業するそうよ」
「どういうこと?」
「私のベッドを入れるからよ!」
 皆の視線がドア方向に集まった時、満を持してチアキが発言した。
「この部屋に決まりました逆井(さかさい)千秋ともうします。今後ともよろしく」
「なんでこの部屋にばっかり転校してくるのよ。他の部屋はまだ二人部屋なのに!」
「寮監に抗議しよう」
 マミが言った。
「ムだよ」
「何よ。あんた狭い部屋が好きなの?」
「寮監とか佐藤先生とかよりずっと上からの指示なのよ」
「理事長とか?」
 チアキは反り返った態度を崩さなかった。
 まさか、本当に理事長の娘とか、親戚とかそういう感じの……
 生まれつき威張り散らすような感じは、そういう血筋だからだろうか。
「理事長の娘とかなの?」
「言うわけないでしょ?」
「そうなんだ」
「だから抗議しても無駄よ」
「すみません、作業始めるんで」
「分かりました」
 四人は素早く最低限の片付けをして、食堂へおりた。
 チアキを先に入らせて、三人は食堂の入り口で話しはじめた。
「本当に理事長の娘なのかしら?」
「ハッタリかもよ? 虚勢を張るのがすきな人いるじゃない」
「確かに理事長と言えば抗議を抑えられるかも。だとしたら頭良いわね」
「逆井とか、名字が名字なんだから、理事長と同じかそうでないかなんてすぐ分かるよね」
 私はスマフォを使って検索を始めた。
「ほら、うち理事長とは名字違うもん」
「けどキミコ。父は理事長の友達、とか言われたら検証できない」
「ミハル鋭い。ハッタリかますならそれぐらいのこと出来るんじゃない」
「じゃあ、どうしたら良いの」
 私は対応に困ってしまった。
 抗議をしても、本当に理事長関連からの指示なら抗議は黙殺されるか、何か適当な理由で言いくるめられてしまうだろう。
 けれど私達だけ部屋が狭いのは納得行かない。
「じゃあ、逆に。チアキが理事長関連に顔が利くなら部屋を広げてもらおうか?」
「えっ……」
「キミコ、そこがポイントなの?」
「えっ? マミは狭いのはイヤじゃないの? それなら何も言わないけど?」
「狭いうんぬんより、チアキと一緒なのが問題じゃない」
 たしかにそこが問題なのかも。
 そう思って食堂をのぞきこむと、チアキは販売機で買ったコーヒー牛乳を飲んでいる。
「キミコ、見ない見ない」