確かに体が軽かった。
 さっきの痛みがなくなっている。
「ほ、ホントだ」
「(あなた回復力が強いのかもヨ。つまり凄くエロい)」
 私は新庄先生にそんなことを囁かれて顔が熱くなるのを感じた。
 先生と私は体を重ねたまま、眠ってしまった。
 
 
  
「なに?」
 ものすごい音がして私は目が覚めた。
「ヘリでしょ。軍が来たのよ。さ、ちゃんと服を着て」
 先生と私は車を下りて、鬼塚刑事のところへ駆け寄った。
 かなりの数のヘリが順に着地しては隊員をおろし、再び飛び上がっていく。
「どうなったんですか?」
 ヘリのローターが回る音が大きく、大声でたずねる。
「ようやく軍がついたのさ」
 鬼塚は地下の方を親指で示すと、続けた。
「軍は地下にいる〈転送者〉はデカイものじゃなく、まだ、パーツと判断したようだ」
「パーツ?」
「全部が繋がって、大きなドラゴンのような形だったり、巨大な蛇にはなっていないとの判断だ」
「間違いないんでしょうか」
「多分、その判断は正しい。あの大きさのものを初めから転送できるゲートはない。あれは、小さいものがいくつか繋がったのさ」
 確かに私が足を突きたてたぐらいであの尻尾は退却した。
 巨大なものの一部なのだとしたら、あの痛みは小さく感じるだろう。それに、大きければここを抜け出している。おそらくこの地下にまだ閉じ込められている事を考えると、その推測は正しそうに思える。
「しかし、〈転送者〉のパーツに対抗するにしては大規模な部隊編成だ。念には念を入れてということだろうが…… 失敗は許されないからな」
 新庄先生が鬼塚刑事の横に立った。
「それで、帰れるの?」
「ああ…… そうだな。ちょっと確認してくる」
 私は不安に思ったことを新庄先生にたずねた。
「あの…… 軍のサポートをしろとかってことには……」
「ならないわ。私達が特殊な能力を持っていることはバレているけど…… 隊員が知って良いレベルのことじゃない」
 それを聞いてホッとした。
「ほら、帰っていいみたいよ」
 軍の指令部が出来つつあるあたりで、鬼塚が大きな腕でマルを作ったのが見える。
「ここで夏、合宿する予定なんですけど……」
「夏? どうだろう。今日の作戦が上手く行けば、じゃない? さすがに地下でドラゴンが出来つつある建物に学生が入り込むことはないわ」
「作戦がうまくいくといいな」
「大丈夫でしょ。〈某システムダウン〉と時が最大の危機だったのに、未だに人類は負けてないんだから」
 その言葉に少し安心した。
 これまでだって、私が知らないだけで何度も危機的状況になったに違いない。
 それを乗り切ってきたのだ。
「さあ、帰ろう」
 鬼塚が言うと、全員が車に乗り込んだ。
 山咲がエンジンをかけると、隊員が誘導を始めた。
 車がセントラルデーターセンターのエリアを出ると、大きなカーブがあって、高速道路に入った。車は、一般車線を他の車と同じように走った。
「すまんな…… 帰りは緊急車両じゃないんだ。寝た方がいい」
 一定のリズムで振動がくるせいか、私は後部座席で寝てしまった。
 目が覚めた時は、鬼塚刑事の車に乗り替わっていて、新庄先生も居なかった。
「あっ……」
「目が覚めたか?」
「〈鳥の巣〉のゲートは?」
「俺が抱えて通過した」
「ご、ごめんなさい」
「よく寝てたからな」
「重かったでしょう?」
「俺が何キロあるか知っているだろう」
 鬼塚は、寮の壁沿いに車を走らせていた。
「あの壁の穴のところでいいのか?」
「はい」
「寮監に話をしてやってもいいが」
 私はスマフォで時間を確認した。
「寮監を起こすと面倒なんで……」
「今度は正式に来てもらうことになるだろう」
「……新庄先生の代わりに、ですか?」
 鬼塚は車を止めた。
 先に下りて私の方のドアを開けた。