「先生、どうやって〈鳥の巣〉で書いたコードを見たんですか?」
 ネットとか外部からは見れない。だからボランティア達が中に入ってコードを組むのだ。
 通信で送ったり取り出したり出来ればもっと復旧しているだろう。
「この前下見で〈鳥の巣〉に入って見てきました」
「えっ?」
「セントラルデータセンターも、宿泊先も見ましたよ」
「〈転送者〉は出なかったんですか?」
 オレーシャはニッコリ笑った。
「残念ですが、一度も出ませんでした。ゴメンナサイ、早くクスリを飲みたいので」
 オレーシャは足早に立ち去った。
 本当に合宿を〈鳥の巣〉内で敢行する気だ。
 私達の書いたスクリプトを見て、セントラルデータセンター、ホテルの全部見て〈転送者〉に合わないということはあり得るのだろうか。メディアに報道されている内容通りであればそれはただしい。しかし、自分の感覚に照らしてみると、それだけ長時間〈鳥の巣〉にいれば〈転送者〉の一体や二体に出くわして当然と思えた。
 私は教室に戻ると、席についた。
 タブレットに先生からメッセージが入った。
『無理に戻ってこなくても良かったんだぞ』
 私は答えなかった。
 授業は淡々と続けられ、その日の学校は終わった。
 翌日、私は学校帰りにマミを迎えに行くことにしていた。
 お昼の時に、ミハルとチアキも行くか尋ねた。
「ミハル、チアキ、一緒に行く?」
「私は放課後、オレーシャに呼ばれていて、行けない」
「えっ、私もなんだけど。ミハルもそうだなんて今聞いた」
「二人共? なんだろうね。補習じゃないよね?」
「……私が補習なんてありえないわ。きっと別件よ」
 学校の用事であればしかたない。
 そもそも最初から自分一人で行くつもりだったし、マミといちゃいちゃしながら帰れるわけだからこっちにとっても都合が良いのだ。
 チアキが怒ったようにこっちを見ている。
「?」
「あんた、顔がニヤついてるけど、なんなの?」
「えっ、笑ってないし」
「ニヤついている、って言うのよ」
 手で顔を確認しながら
「じゃ、マミを迎えにいってくる」
 ミハルが、妙に神妙な顔をしている。
「お願いね」
 私は聞かずにはいられなかった。
「ミハル、どうしたの?」
「……」
 いつもの表情に戻ったものの、何か引っかかるものがあった。
「マミの着替えは持ってきてるのよね?」
「もちろん」
「あんたのことだから、マミの身につけたり、匂い嗅いだりしてんじゃないだろうね?」
「チアキ、何いってんの! そんなことするわけないじゃん」
 マミと一緒のベッドに寝ていた一件から、私のことを誤解しているらしい。
 とんだ誤解…… でもないけれど、私がマミを好きなことがバレるのはまずい。バレたらマミと同じ部屋にいられなくなってしまう。
「力いっぱいの否定が返って怪しい」
「否定しなければ、肯定したって言うんでしょ」
「その通り」
 チアキを叩くフリをした。
「ゴメンなさいっ!」
「わかったわ。とにかく私が責任持ってマミを連れて返ってくるから」
 二人はうなずいた。
 午後の授業を終えると、私は早々に帰り支度をした。
 ミハルとチアキは教室に残ってオレーシャを待つようだった。
「マミをよろしく」
「じゃあね」
「……」
 ミハルは何も言わなかったが、特段変な様子でもなかった。
 ただ、やっぱり気にかかることはあった。
 ちょっと寄り道をしていこう。
 病院につくと、名前を告げ部屋の番号を聞いた。
 フロアを上がると、正面にナースステーションがあった。
「!」
 看護師がいない。
 それにフロアが妙に暗い。照明を間引いているどころではない。最低限の灯りというには暗すぎる。
 いやな予感がする。