「もうっ!」
「ごめん」
「多分、こういうのって監視カメラとか動いているでしょ」
「?」
 私は何の話かわからなかったがうなずいた。
「さっきのも録画されてるかも」
「……」
「だからこういうところではやらないでね」
「……」
 じゃあ…… 別のところならやっていいのか、な?
 思ったけれども言わなかった。
 無人の新交通の中で、二人は黙ってしまった。
 未だにこの沈黙を突破する話題に苦労する。
 自分がもっと頑張らないとマミとの距離が近くならない、それは分かっているのだけれど。
 駅に止まると、珍しく人が乗ってきた。
「ちょっと待って……」
「どうしたの?」
「向こうの車両に乗ってきた人、見た?」
「ちらっと見たけど、長い髪の綺麗な人だった」
「えっ? いやそうじゃなくて、髪に」
 瞬間、顔を見合わせ、
『カチューシャをしてた!』
 二人で声を揃えてしまった。
「(き、聞こえるよ)」
 マミは自分で言って、自分で口を手で抑えた。
「(しかも赤黒だった……)」
「確かめよう」
「(刺激しない方が)」
 マミは立ち上がろうとする私の腕を引っ張った。
「(警戒はしよ。けどこっちから行くのはよそうよ)」
「……」
 さっきの病院のように、マミを隔離出来れば変身して戦えるが……
 ここで争いになったら、マミに自分の姿を見られてしまう。
「(大丈夫、〈転送者〉じゃないから」
 夕日が差し込み車内を赤くしている。
 マミに姿を見られないため、マミを守るためにベストな場所を探す。
 やっぱり一番後ろ…… 先頭車両でもいいのだが、車両の端にある運転席部分に隠れてもらうしかない。車両自体は自動運転なのだが、手動で運転する際の運転席付近はすこし扉があって隠れることが出来るのだ。
「まだ、駅あったっけ?」
「マミ、どうしたの? 急に」
「次の駅で降りよう。じゃなきゃ、あっちを降ろしちゃおう」
「確かに、同じ車両に乗ってなければトラブルになることは無いだろうけど」
「普通の人が、ノーマルなカチューシャを付けてるだけかもしれないけど、不安だよ」
 確かにこうやって視界の端に先頭車両側をチラチラ見ていたら落ち着かないし、いざということになったら身バレずにマミを守れるか不安だ。
「ギリギリでパッと降りようか?」
「あっちも降りるようだったらどうしよう」
 駅、駅で戦いになった場合……
 高架を走る新交通は、おそらくどこの駅も同じような作りだ。だから、駅には改札へ降りる階段があるはず。マミにはそこに隠れていてもらえば、戦える。
「とにかく、降りよう。降りればなんとかなる」
 私はそう言った。
「(声が大きいよ、聞かれたらアウトだよ)」
「(そうだった)」
 大きくカーブを曲がってから、車両が減速する。
 曲がった時に、一瞬先頭車両の女性と目が合う。
 車両がまっすぐになったら、駅が近づいてくる。
「(ゆっくり立って、ドアのところで待って)」
 先頭車両の動きを見ながら、そっと立ち上がる。
「(ドアが閉まるころに一緒に飛び出すよ)」
 マミはうなずく。
 先頭車両の女性に動きはない。
「(気づいてはいないみたい)」
 マミの手を握る。
 車両が完全に停止し、目の前のドアが開く。
 ホームには誰もない。
 先頭車両の女性にも動きはない。
 駅のアナウンスが流れる。
「(行くよ?)」