「!」
 ドアが閉まり始めるタイミングで私はドアの外にでた。
 しかし、つないでいた手が引っ張られる。
「痛い!」
 私は一瞬、手を離した。
「マミっ?」
 横にマミはいない。振り返るとドアは閉まっている。
「マミっ!」
 マミの後ろに、赤黒のカチューシャをした女性が立っている。
「マミ!」
 叫んでいるマミの声が、ドア越しに小さく聞こえる。
「助けて!」
 ホーム側のドアが邪魔して、車両のドアに手を掛けられない。
 車両は無情にも走り出す。
「助けて!」
 車両を追いかけてホームを走るが、どうすることも出来ない。
 飛ぶ、飛んで追いかけるしかない。
 幸い、こっちから先は人口も少ないし、鳥が飛ばない夜が始まる。
 夜空に人が飛んでいても気付かれないだろう。
 マミ…… どうして追い付いたかなんて聞かないで。
 私は駅の監視カメラを確認し、ホームドアの反対側へ飛び降りた。
 瞬間、翼を広げて、線路スレスレから飛び上がった。
 高く飛び上がると、すぐに列車を見つけた。問題は侵入方法だ。
 列車が停止する屋根について、駅に着くまで待つか…… ガラスを破って突入するか。
 どちらにせよ、マミに疑われるだろう。
『どうやって追いつたの?』
 なんて答える? 鳥がやってきて、連れて行ってやる、と話しかけられたとでも言うのか。
 新交通の屋根に取り付くと、足を変身させ、屋根に引っ掛け、頭を下にして車両内部を覗いた。
 どうやら、後ろの車両には誰もいないようだった。
 私は屋根を歩いて前の車両に移った。
 また屋根に足をかけ、頭を下げて中を覗く。
 マミはシートに横になって寝ている。
 髪の長い女は……
 腕に力を入れ、背筋を使って海老反る。
「気付かれた!」
 髪の長い女は持っていた棒状の武器で、覗いていた私の顔を突いてきた。
 間一髪で避けたには避けたが、入ろうと思っていた窓に気付かれてしまった。
 勢いで蹴破っても中には入れまい。
 バリンっ、と窓が割れる音がした。
 反対側だ。
 もしかして、そっちから屋根に登ってくる気か。
 私は素早く音がした方の窓の上に走る。
「おかしい……」
 後ろをみると、棒の先端がチラリと動いた。
 こっちの窓を割っておいて、そっちの窓から上に上がるつもりだ。
 私は反対側へ動いて、チラリと見えている武器をつかもうとした。
 つかもうとした瞬間、フッと水平になったかと思うと、ものすごい勢いで棒が戻ってきた。
 ガツン、と音がして、屋根に叩きつけられた。
 避けるのが精一杯で、尻もちをついてしまった。
 バタバタ、とまたその棒が動くと、もう一度それをつかもうと思って手を伸ばした。
「よし、掴んだ!」
 と思った瞬間、殺気がして、手を離した。
 やっぱりものすごい勢いで棒は水平になった。
 あのまま持っていたら、振り落とされていた……
 翼を広げて、車両と平行に飛んで、入る隙を探すか?
 もしマミにその姿を見られたら?
 屋根の上で悩んでいると、列車が減速を始める。
「あの駅で……」
 屋根から攻略するのではなく、駅に下りて、横から攻略することにした。
 先頭車両がホームに掛かるかかからないかのあたりで、列車から駅に飛び降りる。
 体勢を整えて、身構えていると列車の中の女が私を見つけて、ニヤリと笑った。
 列車が完全に止まって、ホームドアが開く。
 棒状の武器は床に付きたてたまま、車両の外に出てくる様子はない。
「違う!」
 列車のドアが開き始めると、何故女が攻めてこなかったのかが分かった。
「〈転送者〉が出てくるなんて……」
 さっきの駅寄り、ずっと百葉に近づいている。つまり、〈鳥の巣〉に近づいている。
 〈扉〉の支配者の力が強く働くことが出来るという訳だ。
 前の車両のドアから一体、後ろの車両からも一体、首無のE体が車両のドアから、ゆっくりとホームへ出てきた。