登場人物

白井公子 ーー ツインテールの女学生。黒い翼を持つ鳥のような力を持ち、変身出来る。
木更津麻実 ーー 公子のルームメイト。公子のそばにいるせいか、〈転送者〉に狙われてしまう。
鬼塚虎牙 ーー 2m200kgの刑事。虎の力を持ち、変身出来る。


用語

〈鳥の巣〉 ーー 〈某システムダウン〉が発生し、セントラルデータセンターを中心とした円形に壁を築いて立ち入り禁止とした。壁が鳥の巣のようだったことから、そう呼ばれる。

〈某データセンタープロジェクト〉 ーー 全ての事象を情報化し蓄積することを根幹としたプロジェクト。この中心地、セントラルデータセンターが〈某システムダウン〉を引き起こした。

〈某システムダウン〉 ーー セントラルデータセンターが停止すると同時に内部に突如〈転送者〉が現れ、殺戮・破壊が始まった。〈鳥の巣〉を形成し〈転送者〉の封じ込めと、セントラルデータセンターの冷却強化により膠着状態にある。











 部活をしている学生も下校したようで、学校は職員室だけが明るく光っていた。
 鬼塚刑事の車が止まり、私は薄暗い百葉高校に降りた。
 担任の佐藤が、校舎から出てくる。
「白井、大丈夫か?」
 うなずくが、声が出ない。
「先生、白井から状況は聞きました。私から説明します」
「とにかく、中に」
 面談室を一つ開けて、私と佐藤先生と鬼塚刑事が入る。
 誰かが扉を閉めようとした佐藤先生を引き止めた。
「私も話を聞く」
「学校長…… 」
 佐藤先生は鬼塚刑事の方をみる。
 鬼塚刑事がうなずく。
「では場所を変えますか」
「ここでいい」
 そう言って学校長が入ってきた。
 横幅のある学校長と更に大きい鬼塚がいることで、狭い面談室は一気に息苦しくなった。
「刑事さん。どうぞ座ってください」
 学校長が座ると、佐藤先生も座った。
「白井くんも」
 私は座ったが、まともに先生の顔を見れなかった。
「何があったんですか」
 佐藤先生が言うと、鬼塚が話し始めた。
「白井さんと木更津さんが入院先から学生寮に戻る途中、新交通で〈転送者〉を含む何者かに襲撃され、木更津さんが〈扉〉の向こうに連れ去られたようです」
「……」
「いや、それはさっき電話で私も聞いています」
 と佐藤。学校長は、
「で、その何者かというのは、まだ判らんのですかな?」
「判ってません。ただ、周囲に〈転送者〉が出ました。〈扉〉の向こうへ連れ去れれた、という話は多くはありませんが、今までなかった話でもありません」
「〈扉〉の向こうというのは確かなんですか?」
「白井さんの証言からそう判断しています。現場は封鎖して検証していますから確実なことは言えませんが……」
 鬼塚刑事が少し間をおいてから
『それと』
 佐藤先生と鬼塚刑事の言葉がぶつかった。
「どうぞ」
 と佐藤先生が言った。
「行方不明になっている木更津さんの捜索に、白井さんをお借りしたいんです」
「……容疑者の面通しとか、そういうことですか?」
「詳細は捜査上の秘密でして答えられません」
「学校としては白井くんの両親に……」
「学校長」
 そう言って佐藤が話を止めて、学校長に何か耳打ちしている。
「わかりました。白井くんは捜査に協力してくれるかな」
「はい」
 私が行かねばマミは返ってこない。
「鬼塚刑事、よろしくおお願いいたします」
 学校長はそう言って深々と頭を下げた。
「わかりました」
 鬼塚刑事が立ち上がる。
 その影で部屋が暗くなる。
「白井、寮には連絡したのか?」
「……すみません。できていません」
「そうか。寮にはこっちで話しておくから、心配するな」
「では」
 鬼塚が部屋を出て行く。
 私は慌ててそれを追いかける。
「セントラルデータセンター…… こんなに短期間に二度もいくことになろうとはな」
 鬼塚が車にのると、グッと沈み込んだ。
 私は助手席に乗り込むとシートベルトをつけた。
「ギリギリで呼ぶなよ。木更津マミの姿が見えたら迷わず呼べ。とにかくなんとかしなければならないんだ。わかったな」
「はい」
 車は静かに走り出した。
 流れていく風景をみていた。
 いや、そうではない。それはただの光の強弱でしかなかった。

『(ドアが閉まるころに一緒に飛び出すよ)』
 マミはうなずく。