「手早くコアを抜け」
「はい!」
 足を変身させ、正面へ蹴り込み、コアをつかんで足を抜く。
 変身した私の足。鳥の足、鳥の爪がコアをつかんでいる。
 空気が抜けるような音がして、〈転送者〉が消えていく。
 鬼塚の強烈なパンチで、腕の先にいた〈転送者〉二体が同時に消えていく。
 赤い目のような明かりがたくさん見える。
 この数だけE体が近くに存在する、ということだ。
「お、鬼塚さん! エレベータが下がっていきます!」
「そこに止めっぱなしにはできないからな」
「けど、どうやって帰るんですか?」
 エレベータのカゴが下がると、その空洞からは強烈な冷気が出てくる。
「寒い!」
 周りにいたE体も、冷気を浴びてか、エレベータの入り口から、よろよろと後退し始める。
「ほらっ! 手を抜くな、E体につぶされるぞ!」
 目の前に、〈転送者〉の腕があった。
 慌ててかがんでそれを避ける。
「やばかった……」
「早くしろ」
「はいっ」
 E体の腕を上に払いのけ、素早く正面蹴りする。
 百葉高校の周辺で出会う〈転送者〉より、何十倍も簡単にコアを抜ける。つまり、それほど動きが鈍いのだ。
 しかし、体が冷えていて、こちらも動きがにぶい。
「キツイです」
「耐えるんだ」
 しかし、何度もやっていくうち、体が温まってくる。
 単純な作業のようではあったが、残りの数も見えてくる。
「もう少しだ」
「はい」
 ここには最低限の灯りしかついていない。
 疲れてきたせいなのか、〈転送者〉がいないところに蹴りをだしてしまう。
「あっ?」
 背後を取られ、〈転送者〉の腕に挟まれそうになる。
「気を付けろ、気を緩めるとやられる」
「……あといくついるんですか?」
 息が切れてきている。
 ぼんやりとした灯りで、自分と鬼塚刑事の吐く白い息が見える。
「あと、そうだな十は切ったぞ」
「頑張ります」
「見えるか? あそこが階段だ」
 暗い通路の先に、階段らしき縞になった影が見える。
「はい」
 プスン、プスンと私と鬼塚刑事がつぶしていく〈転送者〉の音が響く。
 そして自分達の呼吸音。
 数は減ってきたが、どこのドアか、どの扉から〈転送者〉が増えているのかもわからない。
「扉は? 扉も壊しましょう」
「……」
 鬼塚は首を振って、答えなかった。
「どこなんです? 壊していけば数が減る」
「こん中だ」
 鬼塚が親指で指し示したほうに、霜のついた扉が見える。
 『データサーバー』とだけ書いてある扉。
「この中に無数の扉がある……」
「まさかサーバーラックの扉?」
「ああ……」
 プシュー、と音がして、見えていた限りの〈転送者〉を倒しきった。
 変身をといて、膝に手をつく。
 まっすぐ立っているのもきつい。
 冷たい壁に手をついてうつむく。
「ほら、早く上のフロアに行かないと、また出てくる」