ここで変身を躊躇することは出来ない。
 もし、このことをマミが覚えていたとしても。
 後で嫌われたとしても。
 助けるためには……
「マミ、やめて!」
 一直線にこちらに向かってくる。
 右に回り込んでいくと、そのままマミも左を向いて回り込んでくる。
 周りを壁のようにE体が囲んでいく。
「じゃま!」
 逃げ場に困った私は、正面を塞ぐE体に、|変身させた(・・・・・)足の爪を突き刺し、倒してスペースを作る。
「白井公子」
 声に振り返ると、睨みつけるマミの顔とともに一体となった〈転送者〉の腕が伸びてくる。
 左手で押さえながら避けると、腕の正面にいたE体が破壊される。
「マミ、やめて、お願い」
 マミが見る方向へ腕が動いてくる。
 マミが〈転送者〉の目と口の代わりをしているようだった。
 サーバーラックの間に入ると、マミを取り込んだ〈転送者〉は追ってこれずにそこに立ち止まる。
「やめて、お願いだから」
 ラックの間に入れる小さなE体が私を追って、間に入ってくる。
 冷静に自分の足で蹴り、コアを爪でつぶす。
「……コア。マミの入っている〈転送者〉のコアはどこ?」
 私がラックの奥に下がろうとすると、マミは叫んだ。
「逃げるなこら」
 ガツン、とサーバーラックを破壊する。
 私はまたさらに奥へ下がる。
「待てっていってんだろ」
 逆の手で、ラックを破壊する。両サイドのラックが歪み、私はまた一歩下がった。
「うぉらっ!」
 ガン、ガンガン、と何度もラックを叩き、ラックが扉ごと壊れていく。
 自分が身を守れるスペースはあとわずかだ。
「出てこい、お前が出てこい」
「マミ、やめて」
 マミの顔があって、その下の、体が入っているだろうところを蹴ったら、マミを傷つけてしまう。
 どこにコアがある?
「白井公子、これで終わりだ」
 両脇のラックがすべて破壊され、私に向かって〈転送者〉の腕が振り下ろされた。
 私は一か八か突っ込んだ。
「ぐわっ」
「いたっ……」
 自分も痛みで声がでた。
 しかし、私がマミに頭突きをすると、〈転送者〉の振り下ろしてくる腕が止まった。
 これはコアを探し当てたわけじゃない。
 これ以上、マミを傷つけるわけにはいかない。
 私は飛び上がって、マミを飛び越し、〈転送者〉背中を切り裂いた。
「コアはどこ?」
 黒い殻が開き、赤黒い中が見える。
 コアはない。背中側にはコアがない……
「あとは?」
「白井ぃぃ~」
 マミが叫びながら体を回転させてくる。
 私はそれに合わせるように同じ側に回り、背後を取り続ける。
「ちっ」
 E体が、私の動きを察知して、間に入ってきた。
 すばやくE体のコアを蹴り割るが、マミに回り込まれてしまう。
「公子ぉぉ~」
 両腕を同時に私に向けてくる。
 叩き壊すほどのスピードはない。
 どっちに避けるか決めかねていると、ようやく意味が分かった。
「ゆっくり、つぶしてやる!」