部屋に戻ると、二人は何を話すわけでもなくお互いのベッドに入り、寝てしまった。
 そのうちにミハルとチアキが戻ってきて、二人とも起こされたというか、自然に目覚めていた。
 私達は今までの経緯を二人に話し終えた。
「……それか」
「チアキ、それか、ってなによ」
「さっきのスポーツカーの話」
「成田のおじいさん?」
「帰りのバス、めちゃくちゃ機嫌よかったもん。鼻歌歌ってた。初めて見たよ」
「マジ?」
 ミハルもうなずいた。
「何の歌かはしらないけど」
「え~ なんか見てみたかったな」
「そっちのスポーツカーに乗ってみたいよ」
「乗り心地は最悪よ。成田さん、めちゃくちゃスピード出すし」
「……」
 チアキが言った。
「まあ、とにかく」
 立ち上がって、両手を広げた。
「よかったわね。二人とも無事だったし」
「チアキ、どうしたの?」
「わからないの? ハグでしょ、ハグ。こういう時は抱き合って涙を流すものでしょ?」
「……はい」
 私はチアキに抱き着いた。
 顔を見せないからよくわからなかったが、チアキは泣いているようだった。
 そして、何度も頭を撫でられた。
「良かった……」
 私の体を離すと、チアキは今度はマミの方へ行った。
「わ、私もなんだ」
 マミの方が背が高いので、甘えているようにしか見えないが、チアキは必至にマミの頭を撫でていた。
 チアキがマミから離れた。
「……あれ? ミハルとキミコはしないの?」
「……」
「私とミハルもしろって?」
「マミとミハルもよ。わかるでしょう?」
 わざわざそんなことを強制しなくても、と私は思ったが、両手を広げてみた。
「ミハル、ほら」
 意外にもミハルが、ゆっくり立ち上がった。
 まさか、マジか……
「……」
 抱きついてきた。
 私がチアキがしていたように、ミハルの髪を撫でようとした時。
「頭はイヤ」
「ごめん」
 おそらくカチューシャがあるからだ。
 ミハルのこのカチューシャは……
「もういい」
 あっけなく私から離れ、ミハルはマミに抱きつきに行った。
 チアキの時そうだったように、マミがミハルの頭に触ろうとすると、パチンと乾いた音がした。
「痛いっ!」
「ごめん……」
 抱きつき終わると、ミハルが言った。
「これでいい?」
「もちろん」
 チアキは満足げだった。
「チアキ、学校の方はどうだったの?」
「別になんてことはないけど。合宿のプリントが配られたわね。期末テストの結果を合わせて合宿参加メンバーを決めるみたいだけど」
 私は重要な事実に気が付いた。
「あ……」
「キミコどうしたの?」