『注目』と発言した子が、私を見つけられないようで寮生を見回しながら、何度か言った。
「早く…… 白井さんですか?」
 私はうなずいた。
 市川副会長は、台に上がるように言った。
「本日、今より白井公子さんを副会長秘書として任命し女子寮の運営に参加してもらいます。承認いただける方は拍手をお願いします」
「えっ、聞いて……」
 私がそう口にするより早く、市川さんが拍手をはじめ、よくわからない寮生たちが拍手を始めた。
「賛成多数と判断し、白井公子さんを副会長秘書に任命します。……よろしくお願いしますね。白井さん」
 市川さんは私の方を向くと右手を差し出した。
 拍手の中、それを拒絶することもできず、ゆっくりと右手を出すと、市川さんが見逃さずにさっと手をとった。
「よろしく」
「は? はあ」
 さらに拍手が大きくなった。
「役割分担については、食堂外の掲示に張り出します。それでは、解散」
 市川副会長が台を降りた。
「あの、秘書って何すればいいんですか?」
「あ、ああ。私のサポートをしてもらえばいいの。悪い言い方をすると雑用係みたいなもんなんだけど……」
「えっ……」
 さっきのことで気に入られてしまったのだろうか。
「大丈夫、雑用なんか言いつけたりしないから。私のそばにいて判断を手伝ってくれれば助かるわ」
 もしかして、叱ってほしいのだろうか、と私は考えた。
 市川副会長は『M』なのかもしれない。
「お願いね。必要な時はまた呼びます」
「は、はい。それじゃ……」
 私は不安げにこっちを見ているマミ達のところに戻った。
 皆で階段を上がっている途中で、マミがたずねた。
「秘書って何すんの?」
「なんか判断を手伝ってくれって」
「判断? さっきみたいなこと?」
「じゃないのかな」
 マミはにやり、と笑った。
「ああいう、歯向かったみたいな感じで、気に入られたんだ」
「そうだね」
「ツンデレ、だと思われたんだよ。市川副会長に気があるから、ツンツンしていると」
「佐津間の話みたいに作らないでよ」
「いや、キミコにはツンデレの気があるよ」
「そんなことないよ。好きな人に対しては奥手だもん」
 マミ…… マミ、あなたに対して、私の態度のことなんだよ。
「ツンデレねぇ」
「何よ、チアキまで」
「今時、ツンデレツインテールなんて流行らないわよ」
「ツインテールは関係ないっしょ」
「キミコ、じゃ、ツンデレ側は認めたってこと?!」
 そんなことを言ってマミが大声で騒ぐ。
 私たちが廊下で騒いでいるうち、ミハルはさっさと部屋に入ってしまった。
「ミハル……」
 なんだろう、ミハル、未だに、こういうバカ騒ぎに乗っては来ないけれど、最近は一緒にいてくれてたんだけど……
「キミコが、ツンデレツインテールの第一人者ね。決定」
「……」
「どうしたの? 喜びなさいよ?」
「ミハルが……」
「……」
 三人で部屋の扉を見つめた。
「体調でもわるいんじゃない。だって最近はいつも一緒にいたよ」
「そうだね、マミ」
「こっちが意識しすぎると、向こうも引くわよ」
「チハル、そうする」