「蛇の道はへびというやつね」
「?」
「教えるつもりはないわ、あたりまえでしょ」
「最後にひとつだけ…… なぜいま胸があるんですか?」
 市川副会長は急に大声を出して笑った。
「……話してあげる」
 
 
 
 
 私は部屋に戻ると、チアキに声をかけられた。
「なんだったの?」
「……よくわかんない。ただ傍にいただけよ」
「学校から電話でもかかってきたんじゃないかって」
「かかってきたわね。なんでも、寮監代行がくるんだそうよ。さっきのシフト表みたいのも作り直しだとか言ってた」
 上のベッドからマミが顔を出した。
「寮監代行? こんな急に決まるの?」
「確かにね。一日二日、なんなら一週間ぐらいいなくても困らないのにね」
 マミはベッドの階段を降りながら言った。
「もしかして、病気悪いのかしら」
「そっちの情報は聞かなかったんだよね」
 チアキが立ち上がって言った。
「で、代行ってだれ? まさかオレーシャとか?」
「えっ? 学校の先生がやるの?」
 マミは椅子の背もたれに胸を付けるようにして座った。
「可能性はあるんじゃない? オレーシャに寮監ができるかは別として」
「そ、そうなのかな」
「うちの学校人使い荒いから」
「今の寮監はどうなってるんだろう。ちゃんと病院についたのかな?」
「そっちが重要な気がするよね」
 外から大きなエンジン音がした。
 特徴的なリズムの爆音。
「……また成田さん?」
「あっ、この音のこと? 確かにあの赤いスポーツカーの音みたい」
 マミが窓に向かう。
 私も追って寄り添うように窓の外を見る。
「止まった」
「あれ、成田さんが助手席に向かった」
「誰か降りてくるね…… あれ?」
「新庄、先生」
 私とマミは顔を見合わせた。
『新しい寮監って新庄先生?』
 声がそろってしまった。
 長い髪と露出度の高い服。間違いない。
 私とマミは慌てて部屋を出て、玄関に向かった。
 爆音が再び響いて、成田さんの赤いスポーツカーは走り去っていった。
 私とマミだけが玄関に立ち、暗い外からやってくる新庄先生を迎えた。
 近づいてくると、こちらに気付いたようで、小さく手を振った。
「寮監が倒れたんだって?」
「新庄先生は何で寮に来られたんですか?」
 口元がにやりとした後、
「……なんだと思う?」
 と言った。
「もしかして寮監の代わり、ですか?」
「ふっ…… あたり。つーかそれしかないでしょ?」
 靴を脱いでからそろえると、新庄先生はスマフォを取り出した。
「ついたら電話しろって言われてたんだ」
 どうやら学校に連絡しているようだった。
 なんか色々と話した後に、電話を切った。
「二人にきくけど、市川さん知ってるかな、市川さんと一緒に寮の運営決めてくれって」
「知ってますよ」
 私は玄関にある内線電話を操作して市川さんの部屋にかけた。
「はい? あら、どうしたのキミコ」