ガンッ、と音がして、E体は両腕を前についた。
そのまま蹴って体を持ち上げる。短足なE体が逆立ちをするような恰好になった。
「前に!」
「えっ」
E体は逆立ちをするのではなく、腕で体を弾くと宙を舞った。
「踏みつぶされる」
一体、どこが落下地点かわからなかったが、私と新庄先生は全力で前進した。路上の大きな影とスッとすれ違う。
バチィーン、と大きな音がして、E体が着地する。
私は走りながら後ろを振り返る。見ると、あの場にとどまっていたら確実につぶされていたことが分かる。
「こっちを追ってくる?」
「!」
追ってこない、ならE体は学校へ行ってしまう。
しばらくの沈黙から、ゆっくりとE体が振り返った。
新庄先生は両手を上げて大きく左右に振り始める。
「あなたもアピールして」
「えっ?」
「こっちを追いかけてもらわないとまずいでしょ!」
「はっ、はい!」
私は大声を張り上げながら、腕を大きく振った。
E体の赤く大きな目で、こっちを見ているのかはわからなかった。
「なに、なんなの?」
新庄先生は、固まったように動かないE体に苛立った。
「ほら、こっちよ。こっちにいるわよ!」
私も激しく手足を動かす。
「かかってきなさいよ、ぶっ倒してやるんだから」
E体の赤い目が消えた。
まるでまぶたをとじたように。
再び赤い目が現れると、両腕をアスファルトに突きたてながら、ゆっくりと転回した。
「まずい!」
新庄先生がE体の方向へ走り出した。
「あなたは飛びなさい!」
言われるまでもなく、私は翼を広げていた。
少し助走をつけると、飛び上がる。
『どうなっている?』
鬼塚の声が聞こえる。
『早く来てください。E体が学校を狙っている』
なぜ、なぜ学校を狙う。
学校には…… マミがいるのに。
「?」
私の中に単純な答えが浮かんで、すぐさま否定されて消えた。
ありえない。
腕を使って四つ足のように走るE体を追い越すと、急旋回し、腕の付け根を狙って急降下した。
首なしのE体は、この態勢だと上が死角になるはず。
腕の付け根に私の蹴りが食い込めば、腕がちぎれないまでも、攻撃力が半減するだろう。
「あぶない!」
新庄先生が叫んだ。
私はE体に突っ込むのをやめて、急上昇する。
E体の背中に、赤い目が移動してきた。
「見えているのよ」
見えないふりをして、油断させていたというわけか。
反撃は回避したが、どんどん学校に近づいてしまっている。
この翼は見せられないし、見せなければならない事態になったとしたら、学校の危機だ。
新庄先生がE体に追いついた。
下半身を蛇化し、E体の短い脚に絡みつける。
一瞬、E体の動きがとまったが、E体が両腕を同時に使うと、新庄先生は足を取ったままの状態で引きずられてしまう。
新庄先生を引きはがそうと、E体は足で立って腕を振り上げた。
「今だ!」
私は振り上げた腕の付け根に降下して、足の爪を突き立てた。
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