さっき鬼塚刑事が言った言葉が気になり、翼を出して〈転送者〉を見つけたあたりへ飛んだ。
 上空からみても、あのサイズの扉のようなものは見当たらない。
 ただ廃墟のような家があるだけだった。
 これら家の扉から出てくるのは、今までと同じようなサイズのはずだ。
「!」
 一件、足場が組んである家を見つけた。
 その家の近くに降り立つと、周囲を確認した。
 破壊された跡があり、方向は通学路側へ向かっている。
 この足場……
 塀から覗くと、大きなシートが落ちていた。
「まさか」
 足場の上の方に、ちぎれたような紐がいくつも結んであった。
 私はスマフォで写真を撮って、鬼塚刑事に送った。
『これを扉に見立てて〈転送者〉が出てきたりするでしょうか?』
 しばらく反応がなかったが、『位置情報をくれ。後、その場を動くな』
 塀に背中を預けて待った。
 マミが『まさか〈転送者〉と戦っているの?』とメッセージが来ていた。
『戦うわけないじゃん。新庄先生と警察を呼んで処理してもらったのよ。現場検証があるから、もうしばらく動けない』
 そう返して、スマフォを切った。
 しばらく周辺を歩いたりしながら待っていると、鬼塚刑事と新庄先生が車でやってきた。
「これか」
 私はうなずいた。
 遅れて鑑識の人たちもついて、組んである足場の上の紐や、庭に落ちているシートを調べていた。
 紐そのもの、シート、そのシートに付着している土、足場に残っている土など。
 写真を撮っては、サンプルを取るそういう作業を繰り返している。
「この車…… ドアがついているけど〈転送者〉はきませんよね」
「〈鳥の巣〉の外だからな。だが、常にここにおいてあれば来るだろう」
「確かに、このサイズなら、さっきの〈転送者〉が出てきてもおかしくないわね」
 鬼塚刑事は足場の方をにらみつけるように見ている。
「偶然扉が出来たのか、故意にだれかが|扉状に仕立てた(・・・・・・・)のか、それが問題だ」
「山咲!?」
「すぐにその名前を出すな」
「鬼塚刑事、あそこ」
 廃屋の先に見える〈鳥の巣〉の監視カメラを指さした。
「あそこのカメラの映像を分析すれば……」
「そうだな」
 鬼塚刑事はすぐにスマフォで連絡した。
「君たちはもう帰っていい。そのパトカーで送らせる」
「はぁ…… やっとシャワー浴びれる」
「ありがとうございます」
 私と新庄先生はパトカーに乗せてもらって、学校へ戻った。
 担任と校長はすぐにでも話を聞きたい、という状況だったが、新庄先生がシャワーを浴びたいと言って、それが通ってしまった。
「あなたも来なさい」
「私は別にシャワーは……」
「シャワーの時間を交渉した先生の立場に立って考えてよ」
 新庄先生に腕を引かれてシャワー室へ向かった。
 さっさと脱いで先にシャワーを浴びていると、あとから新庄先生が入ってきた。
「ここに一緒に入って良い?」
 二人で体を洗うにはどう考えても狭い。
 体がぶつかってしまうどころではない。
「あの、良いとかじゃなくて、無理です」
「あら、無理じゃないわ」
 私が髪を解いて洗っているところに、新庄先生が無理やり押し込んでくる。
 肌と肌の間に、シャンプーの泡が入り込む。そして、つるっと肌がすれあう。
「あ、あの……」
「大丈夫。あの時と同じよ。回復のためよ」
 以前、〈鳥の巣〉のセントラルデーターセンターで戦った後、新庄先生にいろいろ触られたり、なめられたりして体が回復したことがあった。それとおなじことをしようとしているのか。