亜夢は頬を赤くして黙ってしまった。
「……」
「干渉波は強い? 弱い?」
「……弱いです。学園のテレパシーが今」
「中谷、測定して裏付けを」
 中谷は長い棒を動かしながら、パソコンのモニターを見る。
 しかし、亜夢の様子をみて、動きが止まる。
「どうした、中谷?」
「ら、乱橋さんが……」
「ん? 乱橋くんがどうした?」
「頬を染めて……」
 がッ、と音が出た。
 いや、出てないかもしれないが、それぐらいの勢いで、加山は中谷の頭を叩いた。
「いったぁ…… パソコン落とすところでしたよ。何するんです」
「お前こそ、どうでもいいことで作業を中断するな」
 亜夢は黙って上を見ている。
 確かに頬は赤いままだった。
 それを見て、清川がたずねた。
「乱橋さん、顔赤いわよ? 熱でも出た」
「奈々の裸…… じゃなかなった、何でもないです」
「えっ、ナナ? ナナって男の子?」
 亜夢は首を振った。
「男の子の裸、ってわけじゃないんだ。ふーん」
 清川は亜夢とは反対を向くと、にやり、と笑った。
 亜夢は何かを感じ取って、清川の肩をグイっと引っ張った。
「あっ、笑いましたね。私、何か変なこといいましたか?」
「『ナナの裸』って、その単語だけ聞いても十分変だよ。しかも、顔赤くなってるし」
「けど、だからって、笑う必要ないじゃないですか!」
 さっきまでとは、違う意味で紅潮している。
「笑ったわけじゃないのよ。うふふ、って感じなだけ」
「どこがちがうんですか!」
 言い終わった亜夢の頬は膨れている。
 清川はそれをみてさらに微笑む。
「また笑った!」
「違うって、違うのよ」
「何がちがうんですか」
 完全にふくれっ面になっている。
「いや、可愛らしいな、と思って微笑んでいるだけなのよ。本当に他意はないの」
「むぅ」
 また清川は亜夢の反対を向いて、声を押し殺して笑った。
 同じように亜夢は肩を掴んで振り向かせるが、その瞬間に真面目な顔をした。
「……」
 それを見ていた中谷が言った。
「ほら、何か乱橋さんが大変な感じに……」
「な・か・た・に。お前はお前の仕事に集中しろ」
 加山は中谷の頭を強く頭を押さえつける。
「えっ、でも、でも……」
「お前が『でもでも』って言っても気持ち悪いだけだ」
 真剣な顔に戻って、必死に測定をづつける中谷。
 パソコンの画面を見る度、首をかしげる。
 計測用のアンテナを前後にゆっくり動かす。
「……」
「どうした、何か変なのか?」
「ものすごく弱いところと…… 何故こんなに差が」
 加山がアンテナを奪うように取ると、中谷と同じようにそっと前後に動かす。
「確かに、ものすごい差だな。まだらになっているのか?」
「……影?」
「太陽がどうかしたのか? こっち側は北だから何時も影の中だ」
「……いえ」
 清川と乱橋のじゃれ合いも落ち着き、一同は最初に検問をしていた場所に向かって歩き始めた。
 乱橋が中谷にたずねる。
「やっぱり干渉波は弱かったですか」
「うん、弱かったんだけど…… 強い所もあった。均一じゃない感じ」
「あ…… そうですね。私もなんかそんな風に思いました」
 乱橋がにっこりと笑うと、中谷も笑い返した。
「そう…… 気が合うね。ボクタチ」
「コラ」
 加山がまた中谷の頭を押さえつける。
「調子に乗るな。捜査協力者なんだぞ」
「まあまあ……」