しばらく互いの体を確かめ合った後、先生の呼吸があらくなってきた。
 すると私の肩に手を載せて、体を押し離した。
「……先生っ」
 私は先生の腰に手を回してもう一度体を合わせようとした。
「ごめんなさい」
 先生はそういうと、私の手を払った。
「もう時間も遅いわ。清掃もしなければならないし」
 その気にさせたのは先生なのに…… 私は憤っていた。
 体を洗って、湯船につかり、先生が言うように床を流した。湯船は機械で循環しているから、月一ぐらいの清掃で済むのだそうだ。
 お風呂場の床を流し終えると、脱衣所に掃除機をかける。
 カゴ類を逆さにしてホコリを払い、カゴを置いているボックスをぞうきんでふき取る。
 新庄先生が掃除機をしまうと、私は肩を叩かれた。
「ありがとう。もう終わりよ」
「……」
 私は先生の後をついて、脱衣所を出た。
 どこの部屋でも寝れない私は、先生の後をついて行って寮監室に行くしかなかった。
 私はソファーに横になり、毛布を頭からかぶった。
 新庄先生はまた机に向かい、何か書類の作成を始めた。
「おやすみなさい」 
「(おやすみなさい)」
 小さい声で返事をした。怒っていることを伝えたかったのだ。
 キーボードの音が止まり、近づいてくる気配がした。
「|白井さん(・・・・)」
 私は慌てて毛布から顔を出した。
 新庄先生は腰に手をあて、私を睨んでいた。
「ふてくされるのやめてもらえるかしら」
 私はソファーに正座した。
 そして、頭を下げた。
「そう。立場を考えてもらわないと」
「ごめんなさい」
「もういいわ。|おやすみなさい(・・・・・・・)」
「おやすみなさい」
 はっきりとそう言うと新庄先生はまたパソコンへ戻った。
 私はソファーに横になると、毛布をかぶった。そして声を立てないように泣いた。
 泣いているのがばれたら、またこっちに来て何か言うにきまっている。
 今まで何事もなかった寮で、私はすべてを失ってしまった。
 友達も、先輩も、仲間だと思っていた先生も……
 泣いているうち、私はいつの間にか眠っていた。
 私は寒さで目が覚めた。
 新庄先生はまだベッドで寝ているようだった。
 体がきしむように痛かった。何か変な恰好のまま固まってしまったような感じがした。
 体を起こして、手足を伸ばしていると、先生のベッドでアラームが鳴った。
 先生はさっと着替えると、調理場の方を指さした。
「朝食の用意を手伝ってもらえるかしら」
 無言で従うしかなかった。
 朝食の用意が終わり、自分も朝食をとっていると、新庄先生がやってきて言った。
「今日は、朝食の食器片付けまでやるからね」
 気持ちが悪くなってきて、半分も食べないうちにトレイを下げた。
 そして調理室側に入り、寮生が持ってくる食器類をかたずけた。
 先生と一緒に食洗機に入れる作業を終えたときには、食堂には誰一人いなくなっていた。
 調理室の椅子に座ると、先生がポンと肩を叩いてきた。
「白井さん。あなたと私だけ、最後の便になるから」
「えっ、私のクラスが一番最後のバスじゃ……」
「その後に、もう一往復してもらうことになったの」
 クラスのみんなとはいっしょのバスには乗れない。
「さすがにもう一往復後だと、授業が始まってるんんじゃ?」
「それは承知の上よ。私が話をつけているから大丈夫」
「私が〈転送者〉を倒せるとか、学校が知っているんですか?」
「しっ、そんな話をして信じる人はいないわ。そんな話をしたら私も巻き込まれる」