加山のスマフォと清川のパトレコを接続する。
 パスワードの入力画面になったところで、加山は清川にスマフォごと渡す。
「ほら、パスワード入れろ」
「あの、おトイレいったりしたので、今は勘弁してください。署に戻った映像提出しますから」
「ダメだ」
 加山が清川をにらむ。
 清川は亜夢の顔をちらっと見やる。亜夢は祈るように手を合わせている。
 清川の視線に気づいたのか、加山が亜夢を見る。
「乱橋くん、もしかして君が清川くんに?」
「……」
 合わせていた手を、背中にまわして、亜夢はぎゅっと口を結び、加山の質問に答えない。
「清川、指を出せっ」
 加山はパッと清川の手を掴むと、スマフォに指を押し付けた。
「なっ……」
 指紋認証機能をつかったのだ。
「ここまでの映像はこっちで引き取らせてもらうぞ」
「プ、プライバシーの侵害……」
「映像は移動させて消しておくから大丈夫だ」
「……」
 清川が半べそをかいているをの見て、亜夢が抱きしめる。
「(こっちが先にコピーしてあるんですよね)」
 亜夢が清川の耳元で囁くと、清川は小さくうなずく。
 亜夢は清川の肩を抱きながら、加山の後ろを二人で歩いた。
 しばらく歩いていると中谷が追いついてきたが、何か雰囲気を感じ取ったように、静かに後ろをついてきた。
 パトカーを駐車しているところまで戻ってくると、加山が言った。
「今日の捜査はここまでだ。乱橋くんは今日からはホテルの方で宿泊になるから、昼食をとったら清川くんに付き添ってもらって、荷物をもってチェックインしなさい」
「……」
 亜夢はムッとしたまま答えないので、かわりに清川が返事をした。
「わかりました」
 中谷が住職のところへ挨拶して帰ってくると、パトカーは署へ向かって走り出した。
 署につくと、清川と亜夢は仮眠室においてある亜夢の荷物を取りに入った。
 チェックが終わると清川が亜夢をつついた。
「なんですか?」
「さみしいなぁ……」
「まだ捜査は打ち切られたわけじゃないから、明日も会えますよ」
「亜夢ちゃんの部屋に遊び行ってもいい?」
 そう言われて、何か考えているようだった。
「ごめんごめん。なんか変なこといっちゃったかな?」
「……すこしなら。いいですよ」
「うん、もちろんだよ。じゃあ、ちょっと帰りに寄るね」
「時間が分かったら先に知らせてください。お風呂入ってるかもしれないんで」
「わかった。じゃ、アカ教えといて」
 亜夢と清川はアカウントの交換をした。
 署を出ると、清川は警察署の通りの向かいにある、ビジネスホテルへ案内した。
 ロビーでの受け付けを手伝うと、部屋の前まで行った。
「ありがとうございました。今日はすこしゆっくりします」
「そうするといいわ。警察署で寝泊まりなんてゆっくりできなかったでしょうから、横になって疲れをとるといいわ」
 帰るかと思って扉を開けたまま待っていると、清川は立ち止まった。
「加山さんだけど、捜査のじゃまをしようとしているんじゃない、と思う」
「……」
「根拠はないけど。だから信じて捜査に協力してね」
「……」
 清川は軽く手を振ると、エレベータの方へ歩き始めた。
 亜夢は部屋の扉を閉め、荷物を置くと、靴を脱いでキャンセラーを付けたままベッドに横になった。
「はぁ……」
 天井を見つめているうち、亜夢は寝てしまった。
 
 
 寝返りを打った時にキャンセラーが外れたのか、亜夢は酷い頭痛とともに目が覚めた。
「うわっ……」
 スマフォを見ると3時を回っていた。
 お腹が鳴って、昼を食べていないことに気付く。
 清川はまだ勤務だ。
 どこで何を食べるか全く思いつかなかったが、とにかくロビーに出て、鍵を預けると通りを歩き始めた。
 向かいから女子高生が固まって歩いてくる。
 短いスカート、無造作に下した髪、色はついていないが、ピカピカした唇。
 ヒカジョの連中とは違う、と亜夢は思った。
 その女子高生から視線を感じた。
 どの|娘(こ)が見ていたとはわからなかったが、すれ違いざま「ダサ」と言われた。
 亜夢が振り返ると、三人が横目でこっちを見ていた。