「やっぱり、この近辺で何かありそうだな」
 清川がたずねると、住職は快く答えてくれた。
 住職が言うに、そのバイクは息子さんのものだという。
 息子さんの写真も見せてくれたが、昨日載っていたライダーとは似ても似つかないような体形だった。
 念の為、息子さんは今ここにはいないが、戻ってきたら連絡してくれることになった。
「うちのが何かやらかしたんでしょうか?」
「いえ、あの、そういうことでは」
「……」
 亜夢は外に見えるバイクを見つめた。
「それならいいんですが」
「すみませんが、また捜査の為車を置かせてください。すみませんが、よろしくお願いします」
 清川はそういうと、亜夢を連れて外にでた。
「なんかちょっと違うのかな……」
「……」
 亜夢はバイクのハンドルに触れてみる。
 もし、昨日の超能力者が乗ったものなら、何かが分かる、と思ったのだ。
「どう?」
 清川が小さい声でたずねる。
 首を振る亜夢。
 残念、という表情の清川。
「どうなんだい?」
 加山と中谷も様子を見に来ていた。
「わからないです」
「今度はそのパトレコで記録できるから」
 そういって、中谷は亜夢の肩をポンと叩いた。
 亜夢はうなずく。
「じゃ、聞き込みに行こう。初めに言った通り、今日は絶対四人で行動するぞ」
 三人は加山に向かってうなずいた。
 坂を下りていき、カメラを仕掛けたビルへ向かうと、加山は言った。
「今日は周辺のビルの聞き込みだ。中谷、リスト」
 中谷がパソコンで周囲のビルに入っている会社のリストを出し、建物順のフロア順に並び替えた。
「じゃあ、そこから行きますか」
 中谷が指示したビルへ全員で向かった。
 自動ドアを抜けて、入ろうとした瞬間、亜夢はビルの角からの視線を感じた。
 パッとそこを見ると、角に隠れてしまった。
「乱橋さん」
 立ち止まっている亜夢の手を清川が引っ張った。
「どうしたの?」
「……」
 亜夢は干渉波キャンセラーを外して首にかけ、じっと目を閉じた。
「乱橋くん」
「ちょっとまってください。誰かが……」
 清川と中谷が自動ドアを出て、あたりを探した。
「どうだ?」
「誰もいません」
「不審な感じの人は見当たりません」
 清川も中谷も誰も見つけられずに戻ってきた。
 亜夢は目を開くと、
「すみません。聞き込みを続けましょう」
「大丈夫なの?」
「……」
 キャンセラーをしっかりつけると、亜夢は小さくうなずいた。
 そのフロアは美容院等へ商品を卸す商社だった。
 フロアスペースの八割くらいが倉庫として使われていて、残りの二割に営業員の机があった。
「朝必要な商品を車につんだら、夕方まで帰ってこないからなぁ」
 そういう感じで、あまり有効な目撃情報はつかめなかった。
「そうですか、あの発砲事件の時も同じでしょうか」
「う~ん。おそらく」
 社員は皆そんな感じの反応だった。
 聞き込みが終わると、加山がお礼を言って、全員がビルから出た。