亜夢はキャンセラーを外してあたりの様子を感じ取ろうとしていた。
「乱橋さん、誰かいたの?」
 黙って、と言わんばかりに、亜夢は目を閉じ、制止させるように手を上げた。
 中谷も、加山もあたりを見回すが、こっちを監視しているような見張っているような人物は見つけられなかった。
 亜夢が目をあける。
「……」
「どうだった?」
 小さく首を振った。
 そして干渉波キャンセラーをしっかりと頭に付けなおす。
「中谷。次に行こう」
 パソコンを開くと、中谷は別のビルを指さした。
 次は、飲食店だった。
 調理場の裏口からでると、騒ぎになったあたりがバッチリ視野にはいる。
 一人一人にあたっていくが、当日はシフト外だったりするために、なかなか目撃情報は得られなかった。
 いくつかあった話は、もうパトカーが来て現場検証をしている段階ので気づいたというものだった。
「後で思い返せば、あれが拳銃の音だったんだ、って程度で。たいして印象には残っていないんです」
 それら一言一言、清川は一生懸命にメモを取っていた。
 対して中谷はパソコンをずっと操作していた。会話を打ち込んでいたわけではないようだった。
「ありがとうございました」
 加山が礼を言うと、時間を見てから
「じゃあ、ここでお昼いただくか」
 と言った。
 亜夢は小さく『えっ』っと言ったが、中谷も清川も反論しなかった為に、そのまま店の正面に回って客として店内に入った。
 入り口に入るとき、亜夢は視線を感じて振り返った。
 じっと亜夢の方を見ていた。
「あっ……」
 フェイスマスクをして、表情はほぼ見えない。
 大通りで亜夢と|超能力(ちから)比べをした人物だった。
 亜夢は一人で行動するな、という言いつけを守るため、清川の腕を引っ張った。
「あそこ!」
 言うと、その人物は見えなくなっていた。
「あれ?」
「どうしたの? 乱橋さん」
「昨日のライダーが」
「もしかして、最初にこっちをみていたのも?」
 亜夢はだまってうなずいた。
「確証はないですが」
「……」
 亜夢と清川も加山と中谷の座る席につくと、昨日の話をした。
 中谷がパソコンのキーボードを叩きながら、亜夢にたずねる。
「そのライダーは超能力者で間違いないんだよね?」
「パチーンて、すごい音だったんだから、間違いないよ」
「清川に聞いたんじゃなくて、乱橋くんにきいてるんだけど」
「間違いないです」
「乱橋くんに付けていたパトレコの映像をちょっとみてみることにしようか」
 ノートパソコンを机の端に置き、全員が見えるように向きを変えた。
 キーボードの手前のパッド部分をちょん、と叩くと画像が再生された。
 この店の入り口が映り、ぐらっと画面が揺れると、正面にフェイスマスクをつけた人物が映る。
 中谷の指がちょん、と動く。
 映像が止まった。
 中谷がバッドの上でピンチアウト操作をすると、その人物が大きく映る。
「粗いな……」
「待っててくださいよ。動画だから前後のデータから補完できます」
 アイコンをちょん、と叩くと大きな粒で表示されていた映像が、段々と詳細な映像に変わる。
「……やっぱり」
「昨日のバイクの人だね」
 店の人がたまりかねて注文を取りに来た。
「ちょっと取り込み中なんだ」
 加山が店員を帰す。