清川もすぐに追いかけた。
「亜夢ちゃん、何かわかったの?」
「分かりません。まるで跡がなくなっていました」
「けど、こっちに走ってるじゃない」
「勘です。ヤマカン」
 清川は疲れたように立ち止まった。
 亜夢が振り返る。
「一緒に来てください。確かめたいんです」
 清川はうなずくと、亜夢の後を追った。
 二人は、以前数人に囲まれた、坂の途中にやってきた。
 亜夢が言う。
「私はちょっと目をつぶるので、周りを見ていて下さい」
「いいわ」
 亜夢は目を閉じて、道の上に手のひらを付けた。
 さっきのように何か痕跡がないかを感じ取ろうとしている。
 清川は車や、通行人などが亜夢にぶつからないように注意していた。
 聴診器をあてるように、移動しては手をあて、移動しては手をあてることを繰り返した。
「何かわかる?」
 亜夢は目を閉じて、腕を組んだ。
「……」
 亜夢は首をふる。
 清川は残念そうに肩を落とす。
「戻る?」
「はい」
 二人は坂を下り始めた。
 少し歩いた時に、亜夢のスマフォが震えた。
 歩きながら取り出すと、メッセージを読んだ。
「やった!」
「どうしたの? 何があったの?」
 笑顔を見せた亜夢の顔を見て、清川がたずねる。
「いえ、なんでもないです」
「なんでもないわけないでしょう? 教えてよ」
 寄ってこようとする清川を左手で制し、亜夢は片手でスマフォを操作してメッセージを返していた。
「だから、なんなの?」
「……秘密です」
 返し終わると、亜夢の表情はさっきまでの真剣な表情にもどった。
 キャンセラーをしっかり頭につけ、もといたカフェに向かって歩き始めた。
 二人がカフェに戻ると、加山と中谷が外で待っていた。
「どうだった?」
「見つかりませんでした」
「こっちは、カフェの防犯カメラ映像をコピーさせてもらった」
 中谷が亜夢に向かって「手がかりもなし?」と言って手を差し出す。
「ビルの外にでるまではあるのですが、出てちょっと進んだあたりで、あの車椅子の気配がなくなっています」
「あっ!」
 清川が言った。
「わかった。待っていた仲間の車に乗ったとか、そういうことじゃない?」
「そうかも納得がいきます」
「それなら、周りの防犯カメラに車が映ってるかもね」
 加山が中谷の肩を叩く。
「早く映像集めてこい」
「大丈夫ですよ。このパソコンから収集できます」
 加山が自らの額に手を当て、小さい声でつぶやくように言う。
「お前…… 大きな声でそういうことを言うな。警察でも許されることじゃないんだぞ」
「すみません。捜査が終わったら設定を戻しますから」
 中谷も合わせるように小さい声でそう返す。
「……ん? 車らしいものは映っていませんね」
 四人は立ったまま中谷の持つパソコン画面を食い入るように見ていた。
「本当だ。映ってませんね」と清川。
「あれ? 他のカメラとかで、車椅子自体は映ってますか?」