問題はこの〈巨大電波塔〉この位置からだと、百葉高校や百葉高校の寮でも〈転送者〉が発生するほど出力が上がらないと〈ゲート〉には届かない。
「アンテナの出力を上げるか、アンテナを動かすか」
「出力が上げられないと仮定したら?」
 私はスクリプトを改修し〈ゲート〉を中心にした円を描いた。
「この範囲に移動させれば」
 スクリプトが実行され、地図上に新しい円が描かれた。
「アンテナがあっても不自然じゃない場所……」
 鬼塚はつぶやきながら地図上に指を滑らす。
「ここか」
 携帯電話会社の大きな支社を指さす。
「これ」
 指の下には『電波中継塔』と書かれている。
「もしこれで〈鳥の巣〉のゲートが〈扉〉になったら、ものすごい巨大な〈転送者〉が現れるぞ」
「けどゲートはまだ完成していないわ」
「いや、工事は明日で終わる」
 私は今日見たゲートの様子を思い出した。
 それから〈扉〉の条件を思い浮かべる。
 開閉して、扉とみなせるもの。
「だって、枠だけしか……」
「違う。今日中にあれに『幕』が張られる」
「あんなところから、あのサイズの〈転送者〉が現れたら、アッという間に都心は壊滅状態になってしまう」
「とにかく、白井先生を止めないと」
 私はうなずいた。
 地下に戻り、車に乗り込むと〈巨大電波塔〉へ向かって走った。
 夜中で誰もない通りに、車を止めると、間近にある巨大な塔を見上げた。
「そこの二人」
 後ろから呼び止められた。
 鬼塚が素早く振り返ると、鬼塚は警察であることを告げた。
 後ろに立ったのは制服の警官だった。
「し、失礼しました」
「そんなことはいい。それより、この人物を見なかったか?」
「この人物ですか。さきほど電波塔の侵入者の報告があり、この人物が中に入ったとのことです」
「そうか。ありがとう、行くぞ白井」
 鬼塚が駆け出すと、警官は叫ぶ。
「もういません! その者も逃げました」
「なんだと、それを早く言え」
「すみません」
 鬼塚は車を指さす。
「車に戻れ」
 走りながら、
「さっき見た二つの施設のうち、どっちに行くと思う?」
「私には……」
「ああ、分かった。じゃあ俺の勘でいくぞ。携帯電話会社の支社だ」
 車がグッと沈み込む。
 電動で加速が始まり、ガソリンエンジンに切り替わる。
「また百葉へ逆戻りだ」
 百葉と言っても、今度は海岸線に近い方だ。
 私はさっきの言葉を思い出した。
「さっきの警官、気になることを言っていたわ」
「なんだ? 気づかなかったが」
「その者『も』と言ったのよ」
 鬼塚も正面を睨んだまま応えた。
「白井先生以外の侵入者がいた、ということか」
「父がアンテナを移設して、ゲートから〈転送者〉を呼び出そうなんて考えると思えない」