「やった! これ大切にするね」
 美優の笑顔に、亜夢もうれしくなって笑った。
 美優は向かいの席にもどり、亜夢ももとの椅子にもどった。
 しばらくすると、注文した料理が運ばれてきて、二人は楽しく食事を進めた。
 食事のおいしさに亜夢は興奮し、夢中になって食べた。
 しかし、ドルチェが運ばれてきた頃、他のテーブルで会計をしているのを見て、亜夢は忘れていたことを思い出した。
「美優、ここ高いんでしょ? 私、これだけしかないの」
 テーブルに指で数値を書いた。
 美優はそれをみてうなずく。
「亜夢はそれだけ出してくれればいいよ。後はこっちでもつから」
「えっ、そんなの悪いよ!」
「しっ、声が大きい」
 席と席の間隔があいているから、他の席の声など気にならなかったのだが、亜夢の声は大きかったらしく、一斉に視線を集めてしまった。
 周りを見て、頭をさげる。
「ご、ごめん」
 美優は小さく笑った。
「それより亜夢はそのお金出しちゃって大丈夫なの?」
「明日のごはんは明日もらえるし、朝食はホテルのだから払わなくていいのよ」
 支払いを済ませると二人は店を出た。
 周りは、いい雰囲気の男女ばかりだった。
「亜夢、ちょっと話があるんだけど」
「なに?」
「ここじゃ話せないから、ここ入ろ?」
 美優は『ここ』と言われた場所に、男の人に肩を抱かれた女性が入っていくのをみた。
「ここって」
「ラブホテルだけど?」
「えっと……」
「あ、お金は気にしないでいいわ」
「そうじゃなくて、ホテルなら、私の止まってるところでも」
「狭いでしょ?」
「せまいけど…… って、どういうこと?」
「|理由(わけ)は後で。じゃ、入ろう」
 二人は勢いよく飛び込んだ。
 休憩と告げて料金を払い、指定された番号の部屋へと進む。
 扉を開けて入った先には、大きなベッド、ガラス張りの仕切りの先にシャワールームがあった。
 ベッドの枕元にはコンドーム。
「はぁ~ けっこう食べたね。お腹苦しいよ」
 美優はリラックスした感じで『ボン』とベッドに横になる。
「えっと、私こういうの慣れてなくて」
「歩くのに疲れたりすると結構入ったりするよ。追いかけてくる人を撒く時なんかも」
「追いかけられるの?」
「割とね」
 亜夢は美優をみて納得した。
 顔、スタイル、そしてお金持ち…… すべての要素が、追いかけたりする理由になる。
「話って?」
「そうだね。けど、時間あるからさ、シャワー浴びてもいい?」
「えっ?」
「亜夢の一緒に入る? 一人で入っても、どうせガラス張りだから、同じだよ」
「えっ、えっ?」
 亜夢の頭の中に、奈々のことが浮かんだ。
 奈々にアキナとのキスを問い詰めたのに、自分は美優ともっとすごいことをしようとしている。
 都心である、この場所からはテレバシーは通らない。
 だから後で言わなければ、バレることはない。
「あの、あの……」
「?」
 美優は体を起こして、亜夢の様子をじっと見た。
「そんなに考えるんなら一人で入っちゃうね。入りたかったら後できてもいいよ」
 上着を脱ぎ、ブラを脱ぎ捨て、スカートを下ろし、パンティは…… しっかり畳んでタオルの横に置いてから、シャワールームへ入った。