「え?」
 不思議な単語が入っていた。『パイロットの一番失いたくない存在』という、とてもあいまいな言葉。
「分かりにくかったな。コアに取り込ませるのは『守りたいたった一人の存在』だ。大抵の男は駄目だ。あの女もこの女も守りたい、こいつを抱きたい、あいつも好みだ、となる。私の経験上だがね」
「父さんだけだよ、そんな浮気症なのは」
「……」
 父は睨むように私を見た。
「やってみれば早い」
 鬼塚の言葉に父は手を振って反応する。
「いや、試しているような時間はないぞ。だから最初から一番確率の高い組み合わせで実行する」
「どういうこと? 私がパイロットで父さんがコアに取り込まれるってこと?」
「違う。公子、分かっているだろう、お前の一番守りたい者、だ」
「……」
 私は頭の中が真っ白になった。
「マミ、まさかマミをコアに」
 父は私を見つめる。
「そう、この前連れ去られた女性は確かマミと言ったな。お前をパイロットとする場合、コアに取り込まれるのはその女性しかいない」
「ダメ! マミを死なせるわけにはいかない!」
「死なないさ。パイロットが降りたら、素材とコアは分離する。パイロットが無茶なことをして、機体を傷つければ素材も傷ついてしまうがな」
「そんな…… 傷もつけずに戦えってことなの?」
「アーマーはあるさ。素材を裸で晒したようなものではない」
「けど、マミをコアに取り込ませるわけにはいかない! 私の一番大切な……」
「……そうか。そう言うと思った」
 父は手を放りだすように膝上に置き、窓の外の景色を眺めた。
 しばらくして横目で私を見る。
「時間はないが、私がとりこまれてみる。パイロットは公子、お前だ。私を守る気でやるんだ」
 私はうなずいた。
 〈鳥の巣〉の大きなゲートが見え始めた。
 ゲートの縁に、キラキラと輝くブロック状の光が発生していた。
 〈転送者〉が現れる兆候が見え始めている。
「〈扉〉の準備は整ったようだな」
 鬼塚がつぶやくように言う。
「臨界の光が見え始めている。大きな転送だから、すぐには出てこないだろう。だがゲートの周辺の人は避難させないと」
「白井、俺のスマフォを」
「刑事、念の為、マミという女性も呼んでおいてくれ」
「!」
 私は鬼塚刑事にスマフォを当てながら、父を振り返った。
「念の為だ」
「マミを戦いに巻き込まないで!」
「公子も、あそこから出てくる〈転送者〉を見ればそんな事は言ってられなくなる」
 父はカンタンなパイプをくみ上げ、布を当てた。
 これで〈扉〉の役目はする。
「いくぞ」
 父が腕を引くと、一瞬にしてここが空港のように思えてくる。
『だめだ、キミコ。振り返るな』
『お母さん!』
 いつのまにか、〈扉〉を抜けている。
 近くにある大きな重機。そのタイヤの陰から、父は何か見上げている。
「みてみろ、キミコ。お前が戦わなければならないのは、あれだ」
「えっ?」
 大きな重機のさらに何倍かの大きさの巨人。
 いままでに戦ったことのないサイズの〈転送者〉だった。