ゲートの半分ぐらいの高さから見下ろしている。
『目のような模様ができた。形は丸みを帯びているが、各パーツの色あいがロボットアニメのような感じになってきた』
 鬼塚の|言葉(テレパシー)で、小さいころに見たロボットアニメを思い出す。
 耳あてのようなアンテナが伸び、目は一眼でつながっている。
 肘膝にはあてがあり、巨大な甲冑を来たようなカラフルな機体。
『急げ、ゲートから出てくるぞ』
 おぼろげに前方の様子が見えてくる。
 〈転送者〉はゲート高さを目いっぱい使っている。つまり、こっちの倍の大きさだ。
『ゲートを出てくる前に倒す!』
 手を動かしていいのか、足を動かせば前に動くのか、何も分からない。
 自分はぬるま湯のようなジェルに包まれて立っているだけだ。
 試しに足を上げるように持ち上げる。
『足が上がった??』
 鬼塚が返す。
『足があがった…… すこしだけ』
 このジェルが返す環境フィードバックが弱いのだ。
『床のように反応して』
 コアに向かって|思念(テレパシー)を送った。
 コアは何も答えない。
『これじゃ動けない。状況をフィードバックして』
 片足を上げたり、さげたり、腕をふってみたりするばかりで、すこしずつこちらの世界に出てきている巨大〈転送者〉の手足に先制攻撃することはできなかった。
『動いて!』
 からだを包んでいるジェルが硬直する。
 手も足も、瞬きもできない。
 開いたままの目に涙が溜まって、見たくても見えなくなる。手を動かしてぬぐうこともできない。
 ジェルが絞るように私の体をつぶしてくる。
『し、死ぬ……』
『白井!』
『この|素材(マテリアル)は使えない……』
『だれ?』
『|離散(ディスクリート)する』
『あなた、コア?』
 体を絞り込んでいたジェルがはじけて、空間ができた。
 その空間が保たれ、肌色の空間が保たれたまま、落下していく。
『ロボットが霧のように分解してる』
 ガッ、と私のいた空間が地面に落ちると、その空間がひび割れ、細かく分解して消えていく。
 目の前にコアと、コアについたちいさな肌色の物体が残った。
 肌色の物体が少し広がり、ピンク色の唇が作られ、目玉のない瞼、かたちだけの鼻が作られた。
 そして唇が動く。
 声はしない。
『代弁してやる。「キミコ、さようなら」』
「えっ? 父さん!? お父さん!」
 コアの上に乗った肌色の仮面も消えていく。私は完全に消える前のほんのちょっとの表面に触れることができた。
 父が…… 消えた。
『父は、父はどうなったの?』
『|離散(ディスクリート)した。お前が守るべきものではなかったのだ』
「まもるべきものだったよ…… 絶対に、失ってはいけないものだったのに」
 膝をついて両手で顔を覆う。
「踏みつぶされるぞ!」
 石垣のように、たくさんの岩を合わせた、巨大な足が上がり、前へ踏み出す。