コアが語り掛けてくる。コアしかいないはずなのだ…… けれど……
『マミ? マミなの?』
『うん。何がなんだかわからないけど、キミコ、そこにいるんだね』
『マミ……』
 私はジェルの中で涙を流した。
『ずっと私は戦えなかったけど…… 今日はキミコの役に立てるよ』
『マミ……』
 目の前が歪んで見えなかった。
『キミコ、気づかれた!』
 巨大〈転送者〉が進むのを止め、こちらを振り向いた。
 岩のような腕を前方に伸ばしてくる。
『マミ、危ない!』
 私はサイドステップして伸びてくる腕をかわした。
 巨大〈転送者〉は伸びた腕をそのままに、上下に振り、鞭のように私達を狙ってくる。
 今度は後ろへ軽くジャンプして逃げる。
 何か反撃は出来ないか…… あの腕を取るか?
『打ち付けてきたら、足で押さえこんでみる?』
 マミの考えだった。
『やってみよう』
 相手を中心に少し回り込みながら、鞭をしならせ、振ってくるタイミングを計る。
『いまだ!』
 岩のような硬い腕が大地に叩きつけられた瞬間、こっちの足を上からかぶせる。
『抑えられ……』
 巨大〈転送者〉は体をひねって、もう一つの腕を伸ばしてきた。
『まさか、これを狙っていた?』
 つぶしていた腕を離し、後ろにステップする。
 巨大〈転送者〉は、両腕をうごめく蛇のように扱い、こちらに迫ってくる。
『一方は足、一方は手で受けよう』
『危険よ、手で受けそこねたら……』
『恐れていては勝てないわ』
『けど……』
 私は躊躇した。そして、マミではなく、コアに問いかける。 
『コア、聞こえる? 機体がダメージを受けたらどうなるの?』
『|素材(マテリアル)にフィードバックされる』
『フィードバック?』
『|素材(マテリアル)がダメージを受けるという意味さ』
『やっぱり……』
 この姿を保っている限り、私とマミはずっと生きられる。
 目の前の巨大〈転送者〉に破壊されなければ、私達はずっと一緒だ。
『キミコ。戦わないの? それなら私だけでも戦うわ』
 私の意思に反して、機体が〈転送者〉の間合いに近づく。
『マミ、やめて』
『なら、協力して』
 バシッと音が響き、機体の足が〈転送者〉の片腕を抑え込む。
『来る!』
 もう一つの腕を押さえるため、体を回して……
 バシッ、と音がした。
『うわっ……』
 こっちの伸ばした腕を避けるような軌道を描いて、機体の肩を直撃した。
『マミ!』
 自分の肩も痛かった。
 つまり|素材(マテリアル)だけでなく、パイロットにもフィードバックされるのだ。
 もう一度その腕が振り下ろされる。
 私達は足を開いて完全に腕が入ってくるコースを向いた。
『!』