踏んでいた腕が、アスファルトをえぐって抜けてしまう。
 腕の上にのっていた足が、勢いよく跳ね、機体がひっくり返り始める。
 私は、無意識に翼を広げた。
『白井、ロボットに翼が生えた。金属の、でかいやつ』
 この繭のなかで、翼が広がっている。
 正面からくる腕を捉える。
『持ったまま飛ぶよ!』
 思いがシンクロしたのか、背中部分にある推進力が爆発的に力を発揮する。
 巨大〈転送者〉を持ち上げてしまった。
『それっ!』
 腕の力を限界まで使って引き上げる。
 勢いよく跳ね上がる〈転送者〉を見て、私は思った。
『これに蹴り込もう!』
『うん』
 マミも応えた。
 〈転送者〉を掴んでいた腕を離し、上昇していた推進力を、下へ向けた。
 そして体を入れ替えて、足先を〈転送者〉の胸…… コアに向かって伸ばす。
 上昇してくる〈転送者〉と、落下していく私達の機体。
 ドン、と大きな衝撃が走る。
 〈転送者〉のコアは体を突き抜け、アスファルトを熱で歪めながら穴を開けた。
 ヒビが入って、爆発するコア。
 そこに岩の塊のような体が落ちていく。
 私達はホバリングしながら〈転送者〉が粉々になっていくさまを確認している。
『勝った!』
『やったよ、キミコ。私やった!』
『うん。マミのおかげだよ』
 大事なことが残っている。
 |素材(マテリアル)になったマミが、木更津マミに戻れるのか、どうか。
 父はコアに拒絶されて|離散(ディスクリート)した。
 マミはどうなるのか……
 着陸し、状況を確認する。
 動くものはない。所々で壊れた車の燃料が燃えている。
『アントランスフォーム』
 パイロットの繭が地面に近づき、コアが露出する。
 肌色のジェルは|素材(マテリアル)として固まっていく。
「お願い……」
 私は額の前で手を合わせて目をつぶった。
「マミを戻して」
 機体を構成していた物質が気化するように空間へ消えていく。
 消えていくうちのいくつかは、コアの横にいる|素材(マテリアル)に漂い融着していく。
 輝く|素材(マテリアル)が人の形を作り始めた。
「……ま、マミ!」
 私は光る素体を抱きしめた。
「マミ、戻って。ここに戻ってきて」
 マミの体が見えないほど強く輝いたかと思うと、その輝きが止まった。
 目が慣れてくると、コアを手に持ったマミに戻っていた。
「良かった。マミも助かった」
「う、うん」
「いっぱい人が死んでしまったけど」
「う、うん」
 私は抱きしめながら、マミの返事がおかしいことに気付き、肩に手をかけて体を離した。
「どうしたの? マミ?」