直接声が聞こえた。
 アスファルトのくぼみから顔を出すと、近くに人の姿になった鬼塚が立っていた。
「鬼塚刑事」
 駆け寄って抱きしめた。
「白井。それより、このゲートを早く壊さないと」
「そうか!」
 扉の形式になっていなければいいのだ。どこかこの枠を壊せばいい。
 私は翼で飛び上がろうとして、やめた。
「どうした?」
「マミには…… ああ…… もう知られているよね……」
「おそらくな。把握していないとは思えない」
 躊躇なく翼を広げ飛び上がると、急降下し、ゲートの枠を蹴り壊した。
 鬼塚が歩み寄ってくる。
 私はゲートと反対を指さして言った。
「あとは早くアンテナを見つけて、壊すだけよ」
「そうだな。さっきの爆弾も、そいつらがしかけた可能性がたかいしな」
 見ている方向は、巨大〈転送者〉が破壊した道がつながっていて、煙が上がっている。
「後は……」
 鬼塚は黙ってうなずく。そして、そのままスマフォで警察に連絡を取り始めた。
 私は飛び上がってマミのところへ行く。
「キミコ!」
 マミの近くに降り立つと、私はマミを抱きしめた。
 ふっと、マミの背中の向こうに、父の姿が浮かんで消えた。何か言っていたように思えた。
「?」
「黒い羽根。黒い翼」
「気味悪い?」
「ううん」
 そう言ってマミは首をふる。
 ぎゅっ、と強く抱きしめられる。
「帰ろう。寮に帰ろう」
 マミがうなずく。
 私はマミを抱きしめたまま、空へ舞い上がった。




終わり