「らいじょうぶらけど、つらい……」
 私は新交通の非常ボタンを押した。
 列車の中にある画面に監視駅員の姿が映った。
「どうなされました」
「けが人が出ました、次の駅に救急車を呼んでください」
「けがですか、どのような状況で」
「打撲です」
 私は佐津間を指さした。
「車内映像を確認していいですか?」
 まずい! と思い、私はとっさに首を振った。
「新交通は何もわるくありません、本人が倒れて顔を打っただけです。新交通は訴えませんから」
「……」
 何か監視駅員に疑われているようだったが、監視駅員は言った。
「救急車との連絡がとれました。駅着か、駅着数分でつきますので、おりたホームでお待ちください」
「はい」
 そう言って私は頭を下げた。
 駅につくと、佐津間を駅のホームに引きずりだした。
 まだ足が震えている。
 ちょうど下からサイレンの音が聞こえて、それが止まった。
「ちょうどきたよ」
 ホームにあるエレベータが開き、ストレッチャーを押して救急隊員が向かってくる。
「どうなされました?」
「私が、ぶんな…… いえ、いきなり、ぶっ倒れてしまって」
「打ちどころが悪いのか、膝が震えて立てないみたいです」
「意識はあります。君、名前と年齢を」
 佐津間はなんとか隊員の問いかけに答えた。
「よし、ほら、きみ寝返りうてうるかい、こっちにきて。そうそう」
 布の上に佐津間が転がると、隊員が頭と足の布を引っ張りあげて、ストレッチャーに載せる。
「?」
「君は? 彼の知り合いじゃないの? 一緒に病院行くでしょ」
「……」


  
 日が暮れようとしていた。
 私が新交通に乗ると、後ろからあごに包帯を巻いた佐津間がついてきた。
「まったく……」
「んだよ。」
「午後全部つぶれちゃったじゃない。全部あんたのせいだから」
「俺のせいにすんのかよ」
「じゃあ誰のせいよ」
「……」
 佐津間は、体の下の方でこっそりと私を指さした。
「なにこの手?」
「いや。別に」
「佐津間が殴れ、なんて言い出さなければこんなことにならなかったんだからね」
「殴るにしたって限度があるだろう」
 あんたが女心をわからないから、殴ったんだろうが。私は怒りで拳を握り込んだ。
「!」
 佐津間は両手で押さえるような仕草をする。
「ご、ごめん。俺が悪かった。悪かったから許して」
「ドMのくせに口ごたえするからよ」
 新交通は次第に乗客がいなくなり、私達は少し間を空けて座席に座った。
 急に列車の上についている画面が切り替わり、監視駅員が映し出された。
「今回は喧嘩とかしないようにお願いします」
「!」
 私は頭に血が上った。
「ほら、あんたのせいで新交通の人にめぇつけられちゃったじゃない!」