「僕も今計測して分かったところだよ」
「もしかしたらずっと前から計画していたのかも」
「そうだね。それに非科学的潜在力の機密情報にアクセスできる人物って、ことだよね」
 |非科学的潜在力者(ちょうのうりょくしゃ)に与える電磁波の情報や、それを携帯電話の基地局やアンテナをベースに展開しているという事実は公表されていない。中谷は職務上偶然知りえただけで、亜夢のキャンセラーと、この干渉波の強さを測るシステムだけしか作っていないし、それらを作る知識を他人がアクセスできるような形にはしていない。
「もしそうだとしたら、かなり、やっかいな相手だね……」
 相手も干渉波の知識があるのなら、亜夢や中谷の恰好をみれば、何をつけているのか、何を測定しているのか推測できるだろう。こちらは相手を探せないのに、相手はこっちの危険度が読めてしまう訳だ。
「乱橋くん。相談があるんだけど」
 加山は腕を押さえながら立ち上がった。
「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか、腕」
「清川君、結構やるね。何かやってるの?」
「署で空手を習ってます」
「えっ、うちの署にそんな強いひといたかなぁ……」
 加山は痛みをこらえながら、かすかに笑った。
 清川は加山の銃を拾ってから、加山に近づいていく。
「あの…… 銃を抜いたことを黙っておくかわりに、理由を教えてください」
「……」
 笑いが消えた加山の鋭い眼光に、清川は身構えた。
 襲い掛かろうとする加山を、清川は体をずらしてよけながら、腕をねじり上げた。
「?」
「イタタタっ」
 加山はそう言って、体をくの字に曲げる。
「連れて行くんなら連れていけ」
「加山さん」
 清川はとまどいながらもねじり上げている力は緩めなかった。
 加山を他の警察官のところへ連れていくことにした。
 事情を話すと、清川のパトレコに映っていた状況から、 一時的には加山は護送車に入れておくことになった。
 数人の警官に連れられ、加山が護送車へと運ばれていく。
「加山さん……」
 加山は清川の方を一度も振り返らなかった。
『中谷さん、今どこですか?』
 清川はSMSで中谷にメッセージを送った。
『会場のフロアの上の控室になっている部屋のあたりだ。早く来てくれ。ちょっと話したいことがある』
 清川は迷ったが、加山の話を送ることにした。
『加山さん、理由は教えてくれなかった。今護送車の中入ってる』
『えっ? マジ?』
『そっちいったら話すね』
 清川は通用口側から、カードをかざしてホテル内へ入っていった。



 亜夢は完全に干渉波キャンセラーをはずしていた。
 つまりホテル内は超能力者の力が最大限に発揮できる環境だということだった。
「清川さん、こっちです」
 清川が手を振って、二人に向かってやってくる。
「何があったの?」
 中谷は近寄るようにと、手招きした。
 小声で話し始める。
「加山さんがいたところ、あそこに超能力キャンセラーがあったんだ。中の様子を測定していると、それ一つじゃない」
「えっ、早く探さないと」
「いえ、探したら警戒されます。わざと残しておいて油断させよう、という中谷さんの考えです」
「……けど」
「キャンセラーの位置を探すにはこっちも大げさな機械を使って歩き回らなきゃいけない。今探すには、いろいろ都合がわるいんだよ」
 清川は納得したようにうなずいたが、
「こっちが気づかれないようにするのはわかった。けど、向こうを見つけるにはどうすればいいの?」
 そう言って少しあたりを見回した。
「私が見つけます」
「乱橋さんが見つけられる、っていうことは、相手も乱橋さんを見つけられるわけじゃない?」
「……」
 中谷が笑った。
「だから相手を油断させているんじゃない。いくら|非科学的潜在力持ち(ちょうのうりょくしゃ)とは言え、探そうとしなければ見つかるものでもないだろうさ」
 亜夢の表情が少し明るくなった。
「ありがとうございます。中谷さん」
「なるほど。それにかけるしかないってことね」
「まあそういうことだ」
 亜夢が説明する。
「探すにあたって、壁とかドアノブとか変な感じに触っているので、不自然に思われないようにしたいんです」