必死なオレーシャの姿を見ていれなくなって、うつむいた。
「父は」
 開いていた両手をグッと握った。
「父は私を、私は父を助けようとして」
 もう一度オレーシャの目を見つめ返した。
「けれどどうにもならなくて」
「ああっ……」
 オレーシャが、溜まっていた感情が噴出したように泣き崩れた。
 周りに集まり始めていた寮生が一気にオレーシャの周りに近づいて、先生の肩をかついで寮監室へとつれていった。

 ゲートが開き、巨大な〈転送者〉の足が踏み出される。
 岩を積んだような巨大な足が、ゲートから逃げだそうとするバスを踏みつぶす。
 臨界の光を背にして、ゲートから〈転送者〉の全身が出てくる。
『代弁してやる。「キミコ、さようなら」』
 消えていく|肌色の物質(ちちのにくたい)。

「部屋に入らないの?」
 マミが部屋の中から呼びかけてきた。
「……あっ。うん。入るよ」
 ミハルとチアキも私をみるなり、立ち上がった。
「あんた大丈夫? 何かあったら言っていいのよ」
 チアキはそう言って私を引き寄せてきた。
「あんたもなんか言いなさいよ」
「……」
 ミハルはいつもとちょっと違う優しい表情で、こちらを見ていた。
「二人ともありがとう」
「キミコがこっちの部屋、戻って来れるようにお願いしているんだけど」
 私の後ろでマミが言った。
「ありが……」
 振り返ろうとする私を制して、ミハルが言った。
「キミコ、それがちょっと簡単にはいかないみたいなのよ。一度部屋割りを変えて、いざもどそうとすると、この部屋だけ四人という異常な人数になっちゃうから、何かそれを許可するための理由が必要なのよ」
 ミハルが来た時に四人に出来たんだから、あんたがどっかに動けばいいんじゃないの、と思ったが言わなかった。
「そうなんだ……」
 コアを持つマミとは一緒にいなければならない、とか鬼塚さんの方から学校に働きかけてもらえないだろうか。
 今度、あんな大きい敵が現れた場合、私一人で戦えないのは事実だ。
 今回はゲートを破壊しているが、アンテナは見つかっていない。鳥の巣の外には扉が普通に存在する。
 それを狙われたら、ゲートと同じように大惨事になってしまう。
 私は自分自身で納得して声を出してしまった。
「そうだよ……」
 いや、ちょっとまて…… それはまたあのコアとマミを利用して戦うことが前提になっている。
 だいたい、私は何故戦わなければならないのか……
 私達を守るのが国家の機能だと、授業で学んだばかりなのに。
「?」
 マミやミハル、チアキがきょとんとした顔でこっちを見ていた。
「あっ、なんでもない」
「とにかく、学校復帰おめでとう」
「チアキ! キミコのお父さん亡くなっているのよ」
 マミがたしなめると、チアキは小さくなった。