さらに亜夢は触れている床を通じて意識を広げていく。
 人の出入り、扉の位置などが分かってくる。しかし、ここがどこか何かわからない。
『このスペースは上から見ると、カタカナのコの字型をしているようです』
 清川、中谷と順番に思考を読み取るが、二人ともノーイメージだった。
『亜夢ちゃん、亜夢ちゃん、俺の考え読み取れる?』
『どういう内容ですか?』
『署で見せられたホテルの図面を思い出してみる。それとも、言葉のような思考しか読み取れない?』
『やってみます』
 亜夢はそう送り返すと、中谷の思考を読み取った。
 今考えている信号は変化で読み取りがしやすいのだが、イメージ的なものは一度に複数の情報の励起を捉えなければならず、なかなかうまくいかないのだ。
「んふ、んふ……」中谷のイメージを読み取ろうとすると、本人は『くすぐったい』と感じているようだった。
「いもちあるい」清川の思考から『中谷さん気持ち悪い』と考えている。
 亜夢は|思念波(テレパシー)を送る。
『中谷さんのイメージを読み取るのは無理です。中谷さんが図面を思い出しながら、言葉で表現してみてください』
「ううううあえあい……」
 実際にのどを動かして声を出そうとしているらしい。
 亜夢は中谷の思考から読み取る。
『……四角い形の端に、舞台のようなエリアがあって…… その後ろ…… あっ!』
 どうやら考えているうちに、中谷自身がその場所を見つけたようだった。
『コの字型の領域って、舞台裏手だ。床がコンクリート打ちっぱなしってのも納得がいく』
 亜夢は何とか手を縛っているものを切りたいと思っていた。
 どうすれば清川と中谷を気づ付けずに手足の拘束を外せるだろう。
 いきなり腕を|非科学的潜在力(ちょうのうりょく)で硬質化して振り回せは外れるだろう。しかし、同じものにつながっている清川や中谷を傷つけてしまうかもしれない。
 そうか。
 亜夢はまず、目視できるようにすることを思いついた。
 空気を動かして空間の形や大きさを確認するより、この目隠しを外す方が簡単だったのではないか。
 すぐにそれを実行した。髪の毛をコントロールして、目隠しのマスクに絡め、紐を切った。
 同じようにして、口にかまされていたタオルも切ってはずす。
「ふぅ…… 苦しかった」
「おおやあおあうあん……」
 亜夢の声を聞いた清川はそんな風に言った。
 首を左右に振りながら、後ろの手がどのようにつながれているか確認する。
 どうやって外せばいいか……
 首をまげても腕がどうなっているか分からない。
「どうしよう。後ろが見えない」
『あうあん、ああいああう、ああいおうぁえ」
「もう一度言ってください」
 そう言って、亜夢は清川の思考を読んだ。
『亜夢ちゃん、鏡がある、鏡をつかって』
 どうやら清川のポケットに手鏡があるからそれを使えということらしい。
「えっ、でも、どうやって使えば……」
 亜夢は清川に聞き返した。
「えいういうあいて……」
 すぐに思考を読む。
『宙に浮かせて使えば? 超能力ならそういうのできない?』
「そこまでは…… 出来ないんです」
「あう」
 中谷が声をだして、何か言いたそうだった。
『亜夢ちゃん、清川くんや俺の腕の事を心配してるんだろう? 清川くん側じゃない、私の腕の方はどうなってもいいからこっち側だけでも無理やり外してみなさい。そうすれば後ろを振り返ることも出来るだろう』
「けど……」
「あいあうあん」