私は耳を疑った。そして耳を押さえた。
『キミコ、聞こえる?』
 やっぱり外から聞こえているのではない。心に話しかけられている。
 なぜ、マミが|思念波(テレパシー)を使っているのか分からない。もしかして、|素材(マテリアル)として取り込まれているのだろうか。だとしたら……
「どうしたのよ、あんたも」
「あ…… なんでもない」
『キミコ、助けて』
 私は耳を押さえたままあたりを見回した。マミの姿は見えない。窓の外を見ても、トランスフォームした機体は見えない。
『マミ、どこにいるの?』
『トイレ…… 部屋のフロアのトイレ……』
 私は慌てて部屋を出た。
「あたし、ちょっとトイレ行ってくる」
「なによ」
 扉が閉まる間際、チアキがそう叫んだ。
 私は急いでトイレに行き、一つだけ閉まっている扉をみて、小声で「マミ?」と問いかける。
 静かに扉が開くと「入って」とマミの声がする。
 周りを見ながら個室に入ると、マミが泣いていた。
「ど、どうしたの?」どう
 マミは私にしがみついて、本格的に泣き始めた。
「ね、ねぇ……」
 なんだろう、と思って変わった様子がないか見るが、マミに何があったのかわからない。
「どうしたの? 落ち着いて」
 誰も入ってこないことを祈るばかりだ。
「トランスフォームしているんだと思っていたけど」
 ギィ、と音がして、トイレに誰か入ってきたようだった。
『キミコ、|思念波(テレパシー)で話して』
『うん』
『なにがあったの?』
 キミコは突然立ち上がった。
 私は居場所がなくてドアに押し付けらえた。
『これ見て』
 スウェットと下着を足元まで下げているマミが、見せようとしているのは……
「えっ?」
『声に出さないで!』
 私は慌てたせいで、声を出してしまった。
 マミの方が冷静に|思念波(テレパシー)を使いこなしている。
『ごめん。けど、これ……』
 マミの股のつけねあたり、大事なところあたりから光るコアが顔を出していた。
『マミ、これって、おしっこはどうするの?』
『圧迫されてて、おしっこできないのよ……』
「えっ?」
 マミは指を口に当てた。
 その時、扉を叩かれた。
「何かあったの? 大丈夫? 貸そうか?」
 マミが私を指さす。
「だ、大丈夫です。スマフォ見てたら、好きなアイドルグループが解散するかもって書いてあって」
「ああ、あのグループはこの時期いつもそういう記事出るのよ」
「そ、そうですか」