『それでいいから』
『うん』
 私はマミからはみ出ているコアに触れた。
 頭の中にイメージが飛び込んでくる。
 光で満ちているそこに、人影が見える。光がまぶしすぎて、輪郭すらはっきり見えない。
『キミコ? どうしたの』
『今、コアからイメージが……』
 イメージから話しかけられた。
『私からも、今の状態をどう考えているか話そう……』
 イメージの中の人影が、足を組んで座った。
『私とこの|素材(マテリアル)が頻繁にトランスフォームとアントランスフォームをしたせいで、|素材(マテリアル)側で私と自身の区別がつかなくなっている、と考えている』
『どうすればいいの?』
『私も|素材(マテリアル)との融合は死を意味するからな。今、必死に分離しようとしている。完全に分離するまで時間が欲しい。後…… そうだな、五時間ぐらいか』
『ここから分離するっていうの?』
『一番出やすい場所を選んだつもりだったが』
『……』
 私は手を離して立ち上がった。
『マミ、残念なお知らせが……』
『残念、ってなに……』
『コアは今、分離しようとしているんだけど、時間がかかってしまうの』
 マミは、自分の姿を足元からお腹のあたりまで確認した。
『どれくらいかかるの』
『五時間ぐらいだって。だから、お昼ぐらいまで、かな』
『おしっこ我慢しろってこと?』
『……そうだよね。ってことは、コアが出る瞬間はおトイレにいた方がいいかも』
『私、ここに閉じ込められるってこと? そんな…… 待ってよ……』
 私はマミと位置を代わり、マミ下着をつけさせた。
 下着だけだと、下腹部の盛り上がりが見えてしまう。
 今度はスウェットも履かせてみる。
『これならわからないんじゃない? 出そうになったら、おトイレ行けばいいし』
『いやよ。コアがどっち向きに出ようとしているか、私なんとなくわかるもん』
「?」
 マミはスウェットを持ち上げて見せた。
『こうなるわ。授業中にこんなになったら周りから変な目で見られる』
「……」
『私、寮に残る。オレーシャにそう言って』
『私も残るよ』
 マミは首を振った。
『|これ(コア)が出ようとしているってわかったから、もう大丈夫』
 私はコアが出てくる瞬間とか、その前後が見たかった。
『大丈夫、付き合うから』
『キミコ、私、恥ずかしいから、一人でいいよ。本当になんかあったら呼ぶから』
「……」
『キミコ…… そんなに心配してくれて、私うれしいよ。けど大丈夫だから』
 マミは私を抱きしめてくれた。
 逆の立場だったら恥ずかしすぎる。やっぱり残るのはよそう、と私は思った。
『じゃあ部屋に戻ろう。オレーシャには私から話すから』
 誰もいないことを確認しながら、そっとトイレを出ると、二人で部屋に戻った。