『マミ、分かる?』
 距離が離れすぎていると|思念波(テレパシー)とは言え、うまく会話ができない。相手の識別が難しいからだ。
『マミは考えるだけでいいから』
 |思念波(テレパシー)で自分の考えを送る方が難しいのだ。
『マミ、調子はどう?』
『半分までいかないのよ…… 痛いし、苦しくて』
『えっ? コアが言っていた時間って、もうすぐじゃない?』
『そうなんだけど……』
 持っているスマフォが耳から離れてしまった。
『今どこ?』
『痛くて歩けないから、ずっと部屋にいるの』
 まずい。思ったより難産だった。
 私は先に部屋に入ってマミの秘密を守る手を打たなければならない。
『マミ、頑張ってね。私、急いで戻るから』
 今の時間、成田さんのマイクロバスは動いていない。
 〈転送者〉が出るから、ということで、今、登下校にマイクロバスを使うことになっているが、それを待っていられない。し、他の誰より早く寮にもどらなければならない。となれば、歩いて帰るしかない。
「佐津間、私、寮に戻るから、先生にそう言っといて」
「えっ? なんで?」
「頼んだわね」
 私はカバンを背負うと、そのまま走り出していた。
 周りに誰もいなくなれば、翼を使って戻っても……
 階段を降り、靴を履き替えると、通学路を全速力で走った。校舎から見えなくなった頃、私は黒い翼を広げて加速した。
 あまり上昇すると、学校から目撃されていしまうかもしれなかった。だから低空を飛んだ。
 低空をずっと飛びづ付けるには、滑空する回数を減らさねばならず、体力が必要だった。
「!」
 E体が両腕を振り上げ、上からブロックするように手を下ろしてくる。
「〈転送者〉が出たっていうこと?」
 ドン、と両腕がアスファルトに叩きつけられた。
 気が付くと、E体はその一体だけではない。
「こんなの無理だよ……」
 一体ならなんとかなるが、二体、三体といる場合は私一人で|殺(や)れるか怪しい。
「えっ?」
 両腕を叩きつけたE体の腕が、もう一体のE体を捕まえて持ち上げる。
 持ち上げたE体を、自分の肩にのせた。
 下のE体の頭部分と、上のE体の足ば融合していく…… まさか。
 私は翼を使って全速力で、E体の体を下から上へ盛り上がりながら動くものめがけて足の爪を突き立てた。
 二体のE体は融合し、下のコアを上に移そうとしていたのだ。
「壊れろぉ!」
 頭と足が融合している、薄い部分をコアが通過しようとした瞬間、私の爪が突き刺さり、コアがアスファルトに叩きつけられた。E体の体を抜けた私は、アスファルト上のコアを捉え、割った。
「あと二つ!」
 下の部分のE体が、黒い霧状に消えていく。
『どうした?』
 それは鬼塚刑事からの問いかけだった。
『E体が…… 後二体います』
『場所は?』
『百葉高校と寮のちょうど中間地点です』