「……確かに連絡が来てるわ。今朝、急に、転校が決まったんだって。可愛いわね」
 教師用の連絡ボード、連絡用の電子掲示版のようだった。そこにはその場で撮ったような粗い画像が貼ってあった。
「どこ出身ですか?」
「そういった情報は一切ないわね。いつものことだけど」
「調べてもらえませんか」
「なに言ってるの?」
「|端末(タブレット)貸してください」
 私は椅子を引っ張り出して先生の横にすわり、新庄先生からタブレットを受け取った。
 制服のポケットから折り畳み式のキーボードを取り出して広げ、ペアリングして接続する。
「どうするの?」
「学校が一切しらないわけがないから、アクセスするんですよ」
「私が犯人になっちゃうじゃない」
「大丈夫ですよ。別の端末を経由しますから」
「なにそれ?」
「蛇の道はヘビってやつです」
「……」
「とにかくバレないから安心してください」
 いくつかの匿名用のツールを経由して、学校のサーバーへアクセスする。
 デバッグ用ターミナルツールで直接接続を試みると、あっさりとつながってしまう。
「先生、『北島アリス』のIDを教えてください」
 新庄がタブレットをのぞき込みながら、教師用のアプリを操作し、パスワードを入れると、北島のプロフィールが表示された。
「えっ? これ、本当ですか。顔写真すらない……」
「確かに変ね。ここがID」
 私は学校のサーバーへつながるウィンドウからデータ取り出しのクエリ(問い合わせ文)を叩く。
 数秒も経たずに『北島アリス』のデータが表示される。
「何も入っていない」
「入学承認者に校長の名前があるだけ、なのね」
「さっきの掲示板の方がよっぽど情報がありますよ。顔写真載ってたし」
 新庄先生はほおずえをついて、足を組んだ。
「個人情報の扱いが厳しくなったのかな」
「っていうか、これだけの情報しか入力してなくて、入学手続きできるんですか?」
「最低限の条件はクリアしてるから」
 新庄先生が画面を指さしていた。
 私はその項目名を読む。
「校長の承認?」
 新庄先生はうなずく。
「逆に、この仕組みを利用されたんじゃないですか? 校長の承認部分だけを改変するとか」
 そうだ、チアキや、ミハルが転校してきた時は……
「先生、チアキとミハルのID」
「あんまり関係ない生徒のID見るのも、ヤバいんだって」
「これで最後にしますから」
「……」
 新庄先生はタブレットを操作してプロフィール画面を二つ開いた。
「早くして」
 IDをコピーして、クエリを打ち込む。
 チアキの入学手続きは、しっかりと項目が埋まっていた。
「これが普通だと思うわね。これくらい入力されてから校長の承認になるはず」
 私はミハルのIDでクエリを入力する。