「……」
「なにこれ、さっきの北島アリス、と変わらないぐらい何も入っていない」
「これって、後から入力されないんですか?」
「普通はされていくはずよ。書類不足のまま寮に暮らさせることはないから…… あっ」
 新庄先生は画面を指さす。
「これだけ情報がスカスカなのに、学費と寮費の入力があるのね……」
「どういうことですか?」
「学費、寮費の振り込みがあれば、もしかしたら書類の提出を求めないかも」
「そんなテキトーなことあります?」
「そろそろ切って」
「接続きりますけど…… そんなテキトーなこと」
「そんなもんなのかもね。世の中の源氏って、全部が全部きっちりかっちりできているわけじゃないの。例外もあるわ」
 新庄先生は苛立ったように目を細め、口を真一文字にむすんだ。
「私、職員室に行って、北島アリスの入学に異議を申し立てます」
「ハッキングしてデータを覗き見たところ、不正が発覚しました、とか言うの?」
「……」
 それに対しての答えを用意していなかった。
「ダメね。とりあえず様子を見るしかない。何か変なことがあるなら、そのポイントを中心にして、学校側に資料を要求することは出来ると思うけど」
「わかりました」
 何か北島アリスについて変なことがないか調べればいいのだ。
 今回の転校はどう考えても変なのだから、ちょっと調べればボロが出るにきまってる。
「もういいの?」
「そうとわかったら、ここで寝てはいられません」
「そう。頑張って」
「先生も何か気づいたら」
 パタン、とタブレットのカバーを閉じる。
「うん。わかった」
 保健室を出るとすぐに階段を上がって、自分の教室へ戻った。
 授業が始まっていて、静かだった。
「!」
 私の隣に北島アリスが座っている。
「なんで、あなたが?」
 マミが小さい声で言う。
「(佐藤先生がキミコに北島さんの面倒をみるように言ったのよ)」
 席を変えられたチアキがムッとしてこっちをみた。席の事は、私が決めたわけじゃないのに。
「白井、早く席につけ」
 席に着くと、机のしたで北島が手を握ってきた。
「(なんのつもり?)」
 小声でたずねると、北島はにっこり微笑んだ。
「(放しなさいよ)」
 すると素直に北島は手を放した。
 授業の間中、私は北島と正面に気を配らねばならなかった。
 北島はタブレットの操作が分からなくとも『わからない』とか『おしえて』と言ってこない。
 こっちが気を回して、操作を教えないといけなかったのだ。
 そうして、昼休みになるころには、いつもの3倍も4倍も疲れていた。
「や、やっと昼休み……」
 私が机に突っ伏すと、マミが声をかけてくれた。
「キミコおつかれ」