ミハルと一緒に、こっちに集まってくるもののチアキはムッとしていた。マミが言う。
「さあ、お昼食べに行こう。北島さんもどう?」
 北島はうなずいて、私と同時に立ち上がる。
「いつも購買で食べ物買って、校庭の方に出て食べてるの」
 疲れている私に代わって、マミがずっと北島と話している。
「北島さん、お金とか持ってきてる?」
 北島はうなずく。
「よかった」
「(ゴメン、マミ)」
「(いいよ。だって、キミコ疲れてるでしょ)」
 お昼の間中、マミが積極的にアリスの世話をしてくれたおかげで、私は疲れが癒されるのと同時に、アリスの観察ができた。観察して分かったことがある。
 一つはしゃべらないこと。
 何か伝えなければならない場合には、必ず学校支給のタブレットを操作していた。ペンで書いたり、キーボード操作をしたりするのだが、書いて反応するのは、私達と同じぐらいの速さで応答する。つまり、言語が不明なわけではないのだ。つまり、普通に聞き取れ難なく理解し、返事もできるはずなのに、なぜかしゃべらない、のだ。
 二つ目は小さなことだった。
 それは歩き方だった。マミとアリスが隣り合って歩いているのを見ていた時、スカートの揺れ方が違うことに気が付いた。マミは腰をひねるようにして歩く癖があり、必要以上にスカートが揺れるのだが、アリスのそれはまた違っていた。右、左とゆっくり移っていくような揺れではなく、あくまで感覚でしか表現できないが、どこか機械的な、振動と呼ぶ方が近いような、そんな揺れだった。
「あんた何みてんのよ」
 チアキがたずねた。
「別に、何というわけでは」
「うそ。マミとアリスのお尻ばっかりみて」
 聞こえたのか、マミは手をお尻に回して、スカートを押さえる。
「マミ! 違うからね」
 マミは気にしていない、という感じに手を振って答えた。
 今は、隣のアリスがタブレットに書く答えを読むのに必死になっているようだった。
 私は少し立ち止まって、ミハルを先に歩かせた。
 後ろをついて歩き、ミハルのスカートの揺れの様子を確かめた。
「キミコ? ねぇ。あなた、やっぱりお尻を見てない?」
「チアキ、ちょっとお願いがあるんだけど」
 私は耳打ちして、チアキに先に歩いてもらった。
「あんまりジロジロみないでよね」
 チアキは跳ねるようにあるいていて、これもまた独特なスカートを揺れをみせていた。
 しかし、ミハルやチアキの揺れからは、振動のような感覚は感じられず、アナログな、リニアな印象しか残らなかった。
「ありがと」
 私は少し小走りで進んで、マミとアリスの後ろについた。
 やぱりアリスの歩きは何かが違っていた。
 足の関節か、筋肉のつき方が違うのか……
「キミコ、ちょっと」
 と、チアキに腕を引っ張られた。
「さっき言っていたの、わかる気がする。私も今、アリスの歩きに違和感をもったわ」
 相談の結果、こっそりとスマフォで動画を取って、何度も繰り返しみることにした。
 午後の授業はスキをみてはその動画を眺めて考えていた。
 チアキも私も結論が出ないまま、授業が終わった。
 担任の佐藤がクラスに入ってくると、私とアリスに言った。