「白井、今日から寮の部屋割り変わるらしいから、寮で指示を受けて。後、北島も寮に入るから、スクールバスに一緒にのって、寮の案内も頼むぞ」
「……はい」
 私は返事をして、アリスの方を向く。
 アリスは察したのか、私にお辞儀をした。
 マミがアリスに声をかける。
「私も一緒に帰るからね、アリスちゃん」
 アリスはうなずく。
 私達五人は、成田さんの運転する帰りのスクールバスに乗った。
 相変わらず音は豪快だったが、スピードは出ていなかった。
 私は端の席に座り外を見ていた。横にはアリスが座っていた。
 前にマミとミハルが座り、チアキは一人で一つ後ろに座った。つまり、誰一人声を出さない組み合わせだった。
 他の生徒も妙におとなしかったせいで、室内にはエンジンの音だけが響いていいた。
 私は外の景色の中に異変を見つけた。
「まずい」
 成田さんも気づいたらしく、ブレーキを掛けた。
「キミコ!」
 マミも気づいたらしく、立ち上がって後ろを振り向いた。
「うん」
 私はアリスの前を通り過ぎて、バスの通路を駆け出した。
「私も!」
 振り返って、マミへ言った。
「マミはこのまま寮へ戻って」
 私はバスを降りた。
 正面にはE体の〈転送者〉が道を塞いでいた。
 後ろにスクールバスに乗った生徒の視線を感じる。
「(こっちにきなさい)」
 と小さく言って、バスの真横、乗っている生徒たちの死角を、学校へ戻る方向に走る。
 同時に、成田さんがアクセルを全開して、〈転送者〉へ向かう。
 バスは、ギリギリですれ違う。
 〈転送者〉の陰になって、私の姿はバスから見えなくなる。
 これでよし、と私は思った。
 私が戦って、〈転送者〉を破壊すればいい。そうすれば〈転送者〉は寮も学校も破壊しない。マミも傷つけないし、街も破壊されない。
 E体がすごい勢いで私に突っ込んできた。
 強靭な腕を振り上げ、それをつなげて振り下ろす。
 手をつなげたせいか、E体の腕がアスファルトに強く食い込んだ。
「!」
 横に避けた時に、寮の方向に人影を見つけた。
「マミ?」
 〈転送者〉の動きをみながら、その人物を見極めようとする。
「ア、リス……」
 何を考えているのか、それとも何も考えずに私を追ってバスを降りたのだろうか。
「あんた状況わかってる?」
 この距離で聞こえるかはわからなかったが、私はそう口にしていた。
 アリスは微笑むわけでもなく、怯えているわけでもなかった。委縮しているとか、躊躇している感じもない。ただ無表情にこっちを見ている。
 この大きさの〈転送者〉が暴れているのに?
 E体が食い込んでいた腕を勢い良く引き抜くと、道路のアスファルトが剥げ、空に放たれた。