「なんで?」
「亜夢にはいろいろやらされるからな。寮の部屋の掃除とか、教室の掃除とか、プール掃除とか」
「掃除ばっかりじゃない」
「今まで、そういうのじゃんけんで決めてたけど、それをババ抜きにすれば全部あたしが勝ったはず」
「逆に全部負けてたの?」
 と美優が言うと、ゆっくりとアキナはうなずく。
「それもどうなのって思うけど……」
「あっ、美優。馬鹿にした。ゆっとくけどね、一対一のジャンケンは亜夢に勝てないから。めっちゃ動態視力いいのよ」
「動態視力? 見て逆を出すの?」
 美優はあきれたような顔で亜夢を見る。
 亜夢はまだ手元のトランプを見つめている。
 奈々が苦笑いしながら、美優に答える。
「ちょっとずるいよね。けどそれはみんな同じ条件だから……」
「まあ、手の振り方とか癖で見抜くのとかわらない、っちゃ変わらないけど」
 美優は気が付いたように人差し指を立てる。
「あ、じゃあ、ババ抜きだって考えを読めば?」
「それがそうはいかないんだよ」
 アキナが言う。
「私は全然変なことを考えてれば亜夢がいくら読もうとしても読めないのはわかってるから」
「?」
「じゃあ、私達の考えは?」
「伝えようとしているなら読めるかもしれないけど、なんでもかんでも人の考えが分かるわけじゃないのよ」
「へぇ」
 美優は納得したようだった。
 四人は連休を利用して、海沿いの村に行く途中だった。


 話は小林達が襲ってきた翌日に戻る。
 亜夢達四人は、空き地で男たちと喧嘩しているのを通報され、亜夢は校長室に呼び出されていた。
 皺だらけだが、誰より姿勢がいい白髪の老人、非科学的潜在力女子学園の校長はいつものように生徒を叱っていた。
「|非科学的潜在力(ちから)を使って、|超能力(ちから)で解決している限り、君たちはいつまでたっても社会に出ていけない。この片田舎から羽ばたけないんじゃぞ。確かに相手が悪い。復讐のために武器まで持ってきている。だが、それを超えるような武器で対抗してはいけないんじゃ。わかるな?」
「……」
「分かるな?」
 老人の語気が強まった。
「はい」
「声が小さい」
「はい!」
 老人は一人一人に紙を配ると言った。
「そこに反省文を書いてきなさい。反省文を見て、理解していない、と思った者は、もう一度ここに呼びだして説明する」
 亜夢が言う。
「それパワハラ……」
 人差し指を盾て左右に振った。
「違う。これは教育じゃ」
 亜夢は、むすっとして校長を睨んだ。
「亜夢、あれ聞いてみてよ」
 横に座っていた美優がそう言った。
「……」