「大丈夫だよ。もうしないから。出てきて? お話しよう?」
「出て行かない」
 美優と亜夢は顔を見合わせた。
 奈々は顎に指を当てて、何か考えているようだった。
 亜夢がそれを見て奈々にたずねる。
「(何かアイディアある)」
「(やってみていい?)」
 全員がうなずいた。
「私、奈々っていうの。この子は亜夢、こっちの子が美優。最後のおねぇちゃんはアキナっていうのよ。お名前は?」
 名前を聞き出そうという作戦か、と三人は思った。
 名前が分かれば呼びかけやすい。
 四人はそれぞれ藪の動きをじっと見ていた。
「ハツエよ」
「えっ?」
 四人は再び顔を見合わせた。
「ハツエだって」
「ハツエって、校長の言っていたあのハツエ?」
「ハツエって、お婆さんだと思っていたんだけど。だって私達の先輩なんでしょ」
「確かに声は若いけど、出てきたらお婆さんかもしれないじゃん」
「……」
 亜夢は一人、藪を向いてたずねた。
「ハツエさん。私達、あなたに相談があるんです」
「(ちょっと、いきなり何言ってんの亜夢)」
 そう言ってアキナが亜夢のそでを引く。
 ガサガサ、と音がして、藪の中から飛び出してくる人影があった。
 小さく、黒く、弾丸のように宙を|回転(ロール)し、四人の頭を飛び越えて、亜夢の後ろに着地した。
 ゆっくりと立ち上がる姿は、亜夢たちの三分の一ほどの背丈の、女の子だった。
 肩紐になっている黒いワンピースに黄色い靴。金髪に黒いカチューシャ。
 両手をお尻のあたりで回して立っている。
「外国人?」
「ハツエちゃん?」
 両手を後ろにした姿勢のまま、上体を突き出して言う。
「相談ってなに?」
「あの、この|娘(こ)が|精神制御(マインドコントロール)されてしまっているんです」
 亜夢が美優の両肩に手を置いて、押し出すようにした。
「この|娘(こ)を助ける方法を教えてください」
「よろしくおお願いします」
「お願いします」
 亜夢のお願いに、奈々とアキナが同調したように言った。
 美優はいぶかし気な表情を浮かべる。
「ちょうだい」
 ハツエを名乗る女の子は、右手だけ前に出した。
「?」
「飴とか、チョコレートとか持ってないの?」
 亜夢は背負っていたバックを下して中を探し始めた。
「(亜夢、ちょっとまって)」
 美優が亜夢を制し、全員に手招きをして集めた。
 五人が道の真ん中で輪になって顔を見合わせる。
「(どうしたの美優)」
 美優は全員の顔を見回して、ハツエと名乗る少女を見つける。
 美優はだまったままさらに道を戻る方向を指さし、小声で言う。
「(向こうで話そう)」
 三人の動きにハツエと名乗る少女がついてくる。
 美優は困ったような表情。