亜夢がようやくバックからお菓子を探し出す。
 ハツエが笑顔になって両手を伸ばすと、美優が亜夢からお菓子の箱を取り上げる。
「あっ!」
「ハツエちゃん。このお菓子あげるから、しばらくここで待ってて。おねぇさん達だけでお話したいの」
「あたしのお菓子!」
 ハツエと名乗る少女が飛びついて取ろうとするのを、美優は箱を高く上げて阻止する。
「あげるから、お約束できる?」
 ハツエと名乗る少女はうなずく。
 美優は少し待ってから、箱を手渡す。
「(ちょっと、こっちにきて)」
 美優に言われて、三人は道の曲がり角まできた。
 ハツエはさっそく箱を開けてお菓子を食べている。
 その様子を確認した美優が切り出す。
「みんな、あの子がハツエだと思うの?」
「えっ? だって本人がそう言ってるじゃん」
 亜夢はそのハツエを名乗る少女を指をさしてそう言う。
 美優はあきれたような顔をする。
「あんな小さい子が|精神制御(マインドコントロール)の対抗策を知っているとでも?」
「まあ、私達よりは若いわね」
「奈々。若いなんてもんじゃないでしょ? 幼稚園の年長さんか低学年の小学生ってところじゃない」
 アキナが挙手をする。美優が指さす。
「はい、ハツエなんてシワシワネーム、お年寄りにしかつけないんじゃない?」
「だから……」
 美優はうつむいてため息をつく。
 顔を上げると、捲し立てるように言った。
「校長が頼りにするぐらいの人物が、あんな小さな子供だと思えない。だからあの子が自分をハツエと言っているのはウソで、あの子のお母さんとかおばあちゃんのことじゃないかってこと。私は、あの子にお願いしても直接|精神制御(マインドコントロール)対抗策を教えてくれるとは思えないの。だいたい、なんで皆はあの子が『ハツエ』だと思ってるの?」
「だって」
 美優は亜夢に顔を近づける。
「だってなに?」
「本人が『ハツエ』って言っているじゃん」
 美優は肩を落とし、うつむいた。
 そしてゆっくりと声を出した。
「だぁ、かぁ、らぁ~ それ、不自然でしょ? あの子は自分が『ハツエ』だって、騙っているのよ」
「奈々、かたるってなんだ?」
「嘘をつくという意味よ」
 美優はアキナと奈々のやり取りを聞き、自身のおでこを手で押さえた。
「じゃあ、誰も疑わないの?」
 そう言ってから三人の顔を順番に見ていく。
 亜夢は何も言わない。
 アキナは腕組みをして首をかしげている。
 奈々は…… 美優の方を見て…… 口を開いた。
「確かに変は変だよね」
「奈々、ありがと。良かったよ、私だけ頭おかしいのかと思った」
 すると、アキナが同調した。
「冷静に考えればそうかもな」
「アキナ、私の言ったことが理解できたのね」
「バカにしないでよ」
 そう言うと、ぷいっとそっぽを向いた。
「亜夢はどう?」
 亜夢は『ハツエ』と言っている少女の方を見ていた。
 少女は聞こえているのかいないのか、ニコニコ笑顔で、お菓子を食べながら亜夢に手を振っている。
「あの子が『ハツエ』さんだと思う。容姿はともかく」