首がもげた後は、体を蹴るたび、そこから大量の体液が吹きだしてくる。
「いい加減、壊れなさいよ!」
 怒りを足先に込めて蹴り込む。
 そこに硬い手ごたえがあった。コアだ。
 私は足の爪でそのコアを確認するようにつかむ。
 そしてゆっくりと力を入れていく。
 乾いた音がして、コアが砕けた。
 動いていた手足が完全に停止した。
「……」
 今まで戦ってきた〈転送者〉と何か違う。
 なぜそう思ったのか、分からないまま、私は気分が悪くなった。
「うっ」
 部屋に置いてあったゴミ箱の、ビニール袋の中に嘔吐した。
 ここは寮の部屋だ。
 その中に、制服を着た遺体が横たわっている。
 首のあたりで、裂けた人の皮があり、その下にはヘビの首少し出ている。
 もがれた蛇の頭は顎から裂けて、体液まみれになっていた。
 鋭い爪がある腕も、折れてありえない方向に曲がっている。
 お腹には、何度も突き刺したように穴が開いていた。
 すべて、私がやった結果。
 これを片付けないといけない、のか……
 私は初めて室内で〈転送者〉を処理したことに気付いた。
 今まではすべて、警察が来て後片付けをしていた。
「警察に連絡……」
 そう思って、この現状を見られた時にこれが人の死体なのか、〈転送者〉なのか誰がわかるのだろう。
 確かに首から上はヘビのようになっているし、手も足も人としてはあり得ないような爪が出ていて、これが人間ではないことはわかる。しかし、これを〈転送者〉だと証明するものはなんだろう。
 さっきまで、北島アリス、として扱われていた生き物なのだ。
 警察に電話して、部屋に入ったらここにアリスの死体がありました、では済まないだろう。
 オレーシャがやってきて、私とアリスが一緒にいることが分かっている。私が出たすきにアリスがヘビ化して、何者かに殺害された。とすれば、疑われる人物は……
「私だ」
 そう、まぎれもなく|殺(や)った犯人であり、疑われても当然の状況だ。つまり、警察にこれを片付けさせることはできない。〈転送者〉が機械だとしても器物破損、生物であれば動物愛護法が適用される。私に逃げ道はない。
「とにかく処理しないと……」
 部屋点検はさっきので終わりだったとして、消灯のチェックと、施錠チェックがある。
 それぞれのチェック時間に部屋にいなければ、オレーシャに探される。
 そこでアリスの死体が見つかれば、大問題になるだろう。
 このままではアリスを処理できないため、遺棄しやすいようにパーツに分解しなければならない。
 自分の足や手の力で可能とは思えないから、のこぎりか何か、道具が必要だ。
 大工道具は、寮の外の物置にあるのは知っている。そこに行って帰って来て、バラバラにして、一つ一つどこかに捨てなければならない。
 机の上の鍵を握って、急いで部屋を出る。のこぎりを隠すための上着を肩にかけて持っていく。
 外の物置に付くと、扉に手をかけるが開かない。
「まずい、鍵がかかっている」
 懸命に扉を引くが開かない。音が大きいせいか、物置の直上の部屋の窓が開いた。
「誰?」
 風が強いんだよ。風のせい。お願いだから音なんか気にしないで窓を閉めて。
 私は物置の陰に隠れて見つからないよう祈った。