窓の様子を斜め下からじっと観察し、窓が閉まりカーテンが閉じたのを確認した。
 上に持ち上げつつ物置の扉を開き、のこぎりと、養生用にブルーシートとゴミ袋を何枚か取り出した。
 服の下に隠して、寮に戻る時、寮の入り口に外に向かったカメラがあるのに気付いた。
「……」
 私が死体を処分するために何度も出入りすれば、このカメラに同じ回数だけ映ってしまうことになる。
 消灯時間でのチェック、施錠のチェックがある時に、何度も寮を出入りしていたら何があったと思うだろう。
 私はあのカメラを何とかしないといけないと考えた。
 部屋に戻り、解体するまで元いたベッドに遺体を移した。
 動かない体を持ち上げてベッドに載せるのは、かなりの時間を要した。
 アリスは首から先がなっているので、ヘビの頭部分も入れ、かけ布団をかぶせて完全にそとから見えなくした。
 それからすぐに長い棒状の道具を探した。カメラの向きを変えるか、カメラに何か目隠しをする必要があるからだ。
 定規や棒状のものは、天井近くにあるカメラを動かすのにはどれも長さが足りなかった。
 紐ならなんとか長さは足りるが、紐を先端にかけて、左右に引っ張れるのだろうか、自信がもてなかった。
「だめだ」
 紐や棒ではないとしたら、踏み台を使って直接手で操作するしかない。何でやるにせ、かなりリスクのある作業には違いない。確実な方法を取るべきだと思った。
 とすれば椅子を使って天井に手を伸ばし、カメラの向きを変えるのが手早く確実だと思われた。
 椅子を持って歩くのが見つからないように、見つかったとしても言い訳が立つような理由を考えておく必要があった。
「とにかく、遅くなってからだ……」
 消灯時間を過ぎ、全員が寝静まった後に行動を起こす。
「けど……」
 とにかく体液がどろどろと出続けている。切り口が大きすぎるのかもしれない。
「いや、これは……」
 逆だ。かさぶたのように体液が止まってしまうと、切断するときに再度体液が出てきてしまう。
 完全に出し切らなければいけないのだ。
「……」
 布団をはいで、北島アリスだった体を見た。
 その異様さと、殺してしまったという意識から、めまいとともに吐き気が襲った。
 ゴミ箱に顔を突っ込むようにして吐き始めた。
 もう出すものなくなっているというのに。
 ドンドンと、扉を叩く音がした。
 マズイ…… これを〈転送者〉だと誰も思わないだろう。
 北島アリスを殺害して、変なヘビの頭を付けているとか、そんな風に思われるのがオチだ。
 返事をしないでいると、再び扉がドンドンドン、と叩かれた。
「白井さん? いるなら返事して」
 新庄先生の声だった。
 私はアリスの遺体を隠すのではなく、新庄先生に打ち明けてみることを考えた。
「新庄先生ですか?」
「いるんじゃない。扉を開けてちょうだい」
「そのまえに」
 言葉で言ってしまえば他人にも聞こえてしまう。私は新庄先生に|思念波(テレパシー)を使うことにした。
『北島アリスが〈転送者〉だった、んです』
「えっ? 何言っているの?」
『ごめんなさい。|思念波(テレパシー)で返事してください』
「……」
『もう一度言います。北島アリスの正体は〈転送者〉だったんです』