暗闇に向かって私は言った。
 その時、遠くからサイレンの音がした。
 同時に、拡声器を使った人の声が聞こえる。
「巨大〈転送者〉出現、住民は直ちに避難してください」
 私は飛び起きた。
 巨大〈転送者〉だって? サイレンとその方向的には、学校の寮も含まれそうだ。
 だって、巨大な〈転送者〉が出てくる、巨大な門が必要なはず……
 コンビニの外に出ると、〈鳥の巣〉の壁の方を見つめる。
 〈転送者〉を照らす為のライトで〈鳥の巣〉の壁の向こう側が明るく見える。
「今なら寮には、鬼塚刑事がいるはず」
 目を閉じて|思念波(テレパシー)を送る。本当に巨大な〈転送者〉がいるのなら、それと戦えるのは、マミと私だけだからだ。
『鬼塚刑事。今の放送は本当?』
 反応がない。
 遠すぎるのか、それとも鬼塚刑事が私を拒否しているのか。
 翼を出して羽ばたく。
 十分高く上がると、〈鳥の巣〉の壁の外が見えた。
「……いない。まさか」
 銃声が聞こえた、と思った時は遅かった。翼と足に銃弾が貫通した。
 警察が私をおびき出すために一芝居打ったに違いない。
 痛みのせいで、翼をうまく操れない。高度を維持できず、どんどん降下していく。
 続けて銃声がするが、それは当たらなかった。
 街に降りたら捕まってしまう。私は森の木の頭すれすれをゆらゆらと飛ぶと、上昇しきれずに幹にぶつかり、落下した。
 落下の途中、枝が体中を痛めつけた。
 急所をさけるように、落下の間中、必死にもがいたが、木の上にとどまることは出来ず、地面に激突した。
 手をついて、立ち上がろうとした時、激しい足の痛みとともに気を失った。
「キミコ、キミコ、起きて」
 マミの声が聞こえた。声に反応して、目を開けると、うつ伏せにした顔の下にあるタブレットがフラッシュしていた。
「キミコ、当てられてるよ」
 私はびっくりして立ち上がった。
「白井。また寝てたな」
 クラス中から笑い声が聞こえた。私は周りを見たが、ひとりひとりの顔は陽炎のように揺れていてはっきり見ることができなかった。
「キミコ、これ」
 マミが、スカートをまくりあげて、私の手を引いた。
 誘導されるままに手を当てると、マミの足の付け根、柔らかい部分に触れた。
「うん」
「いいのよ」
 微笑むマミの顔から、何が『いい』のかを必死に考えた。
「いいって、どういうこと?」
「……わかるでしょ?」
 えっと、そういうことなのだろうか。
 もう、私とマミはそういう関係なのだろうか。
 ここは教室だけど、進めてかまわないんだろうか。
 私はそっと指を動かし始めた。
 その下の感触を確かめながら、指でマミの山を撫で、谷をこすった。
「あぁ……」
 マミの吐息のような歓喜に満ちた声を出した。