私は震えるほどの喜びを感じた。
「私も、私も触って……」
 マミの手を自分の方へ引き寄せると、見上げるような目線で見つめえされた。
「キミコ……」
 マミの指はまるで別の生き物のように私の秘部を探し、|蠢(うごめ)いた。
 その指が探し当てた瞬間、私は声を上げてしまった。
「あっ、ん……」
 マミにされるがまま、愛されるまま愛され、果ててしまった。



 目が覚めると、私は汚いコケの生えた岩の上に横たわっていた。
 濃い緑色のコケの上に、赤い体液が通った跡があった。
 さっきまで見ていた、マミとの出来事が単なる夢であったことを思い知らされた。
 そして、体を起こそうとすると、私は背中と足に激しい痛みを感じた。
「うっ……」
 体が跳ねるように反応し、岩から落ちてしまった。
 落ちた先は柔らかい土だったが、草の葉も、土も朝露で濡れていた。
「まさか警察がいるなんて」
 私は〈鳥の巣〉内で捜索隊を向かわせただけでなく、巧妙なことに〈転送者〉が出たなどという罠まで掛けて捉えようとしたことに驚いていた。
「私が〈転送者〉に反応するなんて、鬼塚刑事しかしらないはずなのに」
 それに、私が鳥のように飛び立つことが出来る、と知っていなければ、警察は空に向かって撃たないだろう。つまり何もかも警察にバラしてしまっているということだ。私が奇妙は羽根を持つこと。〈転送者〉と戦っていること、そういう秘密が少なくとも警察には話されてしまっている。学校に伝われば、どうなるかわからないし、クラスメイトに伝わったら……
「もう学校には帰れない……」
 北島アリスを殺した、という疑いが晴れたとしても、奇妙な鳥のような翼を持ち、〈転送者〉と戦っていると知られたならば、学校へ戻ることは出来ないだろう。
 それと重要なことは、警察は私に向かって銃を向けたということだ。
 もし単純な容疑者であれば、警察が無抵抗の私を撃つわけはないだろう。警察がためらいなく撃ったということは、私は人権のないもの…… 〈転送者〉と同類に扱われているのだ。
 警察に見つかったら、その場で撃たれるかもしれない。その覚悟でいないと……
「お父さん……」
 膝を抱えて目を閉じた。
 私にはもう何もない。ただ絶望感に囲まれてしまって身動きが取れない。
「お父さん、助けて」
 父はコアに取り込まれて死んでしまった。もうこの世にはいない。母は某システムダウンの時に〈転送者〉に叩き潰され、死んだ。友達…… そうだ、〈鳥の巣〉の中にある国際空港で離れ離れになった友達。だから私は、今もこうやってあの時のツインテールにしたままなんだ。
「探さなきゃ!」
 国際空港にいかなきゃ。きっと友達はまだそこにいる。いや、いないだろうけど、友達の手がかりは、きっとそこにある。
 私は痛みをこらえながら立ち上がり、太陽をみて、ぼんやりと国際空港のある方向を思い描いた。
 そして草木をかき分けながら、森を歩き始めた。



 大きな舗装道路がいくつも現れ、隠れなければならない私は、迷路の狭まる森を行ったり戻ったりしながら空港に近づいた。ここは〈某システムダウン〉が発生する前まで、この国の首都の国際空港であった。しかし、今はこの通り〈鳥の巣〉の中のただの無人の敷地だ。
「だめか……」
 もうフェンスを越えて舗装路を歩かないと空港へは近づけそうになかった。
 そうでなければ、ぐるっと回って滑走路の先から入るかしかない。
 こちらからなら建物や放置された車両などに隠れながら進めるが、滑走路は遮るものなどない。見つけようとしているなら、あっという間に見つかってしまう。