私はこの女の子が『外にいられない理由』が知りたかった。
「もしよかったら、あなたが外にいられない理由を教えて」
「それは……」
 女の子は、困ったような表情で、目線があちこちに泳ぎ始めた。
 いけないことを訊いた、と私は思った。
「ごめん…… 話せないなら話さなくていいよ」
「……」
 女の子は顔を真っ赤にして、こっちを睨み始めた。
「わかったから、大丈夫だよ」
 怒っていると思った私は、女の子と距離を取った。
「そうか。わかってしまったなら仕方ない」
「えっ?」
 女の子は再び足を白馬のそれに変えた。
 私を見下ろし、円を描くように移動を始めた。
「私の正体がバレたぐらいどうということはない。もうすぐここに〈転送者〉が送られてくる。お前はその〈転送者〉に倒されておしまいだ。蛇女とトラ男も同じようにここへ誘い込んで始末してやる」
 急に乱暴な口調になったことに戸惑いながらも、結局、この女の子は私達の敵だということを理解した。
 何か誤解して、勝手に正体がバレた、と思ったのだろう。
 私は確かめたかった。
「何故私達を倒そうとするの? あなたも改造されたんでしょう? 憎むべきは〈扉〉の支配者じゃないの」
 女の子は笑った。
「馬鹿ね。〈扉〉の支配者に逆らって勝てるわけがない。あなたがどうやってここに来ることになったのか考えてみなさい。キメラであるあなたを社会が排除しようとしたからなのよ」
「社会が排除? 何を言っているの?」
「知っているわよ。あなたは〈転送者〉を倒したに過ぎないのに、殺人容疑で追われている。だから〈鳥の巣〉の中に逃げてきた。それは社会がキメラを排除しようとしているからよ。私はこの馬の姿をしただけで、友達に裏切られ、動物プロダクションに売り飛ばされそうになったわ。そとの世界を逃げ回ったけど自由はなかった。けれど私が唯一、自由を得れる場所が、この〈鳥の巣〉の中だったの」
 言いながら、じりじりと迫ってくる。私は近寄られた分だけ、後ろに下がっていた。
「あなたは、極論すれば、その黒い翼のせいで、社会的に〈鳥の巣〉の外に居られなくなったのよ。〈扉〉の支配者はこの社会の醜さを利用したに過ぎない」
 私は何かもやもやしたものを感じた。
「私は〈扉〉の支配者と協力することにした。〈転送者〉によるこの世界の破壊が終わった後、〈扉〉の支配者が統べる世界になった時、私の居場所をくれると約束してくれた」
「それが、〈扉〉の支配者のうそだったら?」
「まだ〈扉〉の支配者には裏切られていないわ。少なくとも動物プロダクションに私を売ったりしていない」
 この女の子は外にいる人が信じれなくなって〈扉〉の支配者に従っている。
 私はまだこの外に信じられる人がいる。
「マミ……」
「何言ってるの? それともあなたが〈扉〉の支配者に従う、というのなら〈転送者〉の攻撃を中止させることも出来るわ」
「私には、信じられる人がいる。だからあなたにも、〈扉〉の支配者にも従わない」
 私は女の子を睨み返した。
 女の子は腕をぎゅっと絞ると、振り返って、後ろ脚蹴りを浴びせた。
 急所はかわしたものの、フロアの中ほどまで体が弾き飛ばされた。
「では、ここで死になさい」
 女の子が言うと、各フロアから〈転送者〉が一体ずつ現れた。
「1、2、3、4、5……」
 五体の〈転送者〉はどれも黒いE体だった。
「かかれ!」
 女の子が言うと、1階にいた〈転送者〉が襲ってきた。