壁を蹴りながら、美琴の横を抜け、私はホールに戻る。
 しばらくして美琴がゆっくりと振り返ってホールに戻ってくる。
 後ろに〈転送者〉を従えて。
「マンイチノカチメモナクシテヤル」
 そういうと、美琴の横に〈転送者〉がやってきた。
 無抵抗の〈転送者〉の体に、美琴が手を差し入れる。
 グッと、引き抜くとそこにはコアが握られている。
 握られたコアが手のひらと融合し、美琴の体に取り込まれていく。
 反対の腕からも同じことをして、最後の一体は、美琴の馬になっている後ろ脚から取り込まれた。
「グオォォォ……」
 うなるような低い声が響くと、美琴の体が輝きはじめ、同時に巨大化していく。
「モウ、モドレ、ナイ……」
 美琴の顔から一筋の涙がこぼれるのが見えた。
「ウォォォ!」
 振り上げた前足を伸ばし、私に振り下ろす。巨大化した美琴の足は、私を踏みつぶすのに十分な大きさになっていた。
 |蹄(ひづめ)が私の体をかすめる。
 私はどこにコアがあるのかを探った。
 足のあたり…… にはないだろう。着地の衝撃でコアを失ってしまう可能性があるからだ。
 とすると、体だが、馬の部分は私の翼と同じで拡張部分だ。足も同じだが、そんな部分にコアを収めることはないだろう。
 つまり、馬ではない人の体の部分にあるはず。
 私は翼を広げ、空を駆け上った。
「人間の体の部分にコアがあるはず!」
 上昇しながら言った、私の言葉が美琴に聞こえたかは分からない。
 けれど的確な位置を突けば、体はコアを逃がそうとするはずだ。体の中でコアが動けば、位置が特定できる。
「いけぇ!」
 一番隙のある、腹の部分に爪を立てて蹴り込む。
 美琴はパッと、手で払ってこようとする。
「?」
 私をただこうとする手とは別の手は、顔を覆っている。
 さっきの〈転送者〉と同じ考えで動いているなら、一方が攻撃、一方が防御をするのは不思議じゃない。
「顔?」
 顔にコアを配置した〈転送者〉はまだいたことがなかった。
 ただ、こんな巨大な〈転送者〉はマミ一緒に変形ロボで戦った以外では経験のないものだった。
 試してみる価値はある。はらってくる手を避けながら、らせんを描くように上昇する。
 美琴の真上を取ると、反転して真下に降下した。
 気が付いているのか、いないのか、反撃の様子がない。
 そのままいけぇ、と心の中で叫び、爪で蹴り込む。
 コアが逃げる様子がない。
 私は素早く翼を広げて、減速した。
「罠?」
 頭に爪を突き立てる前に上昇を開始する。
 美琴の髪の毛が、右から左から襲い掛かってくる。
「まさか、これで絡みとる気?」
 上昇するための羽ばたき以上に、毛を弾くために翼をたくさん動かさなければならなかった。
 あやうく捕まるところだった。
 私は天井を蹴って方向転換する。