「おねえちゃん、だいじょうぶ?」
 ハツエが洞窟の入り口あたりに立っていた。 
 亜夢が振り返ってハツエの方へ歩いていく。
「今のはなんですか?」
 ハツエは腕を組んだ。
「うーんと」
 そういうとハツエは|思念波(テレパシー)で語り始めた。
『いまのは、亜夢が作り出した影じゃよ。光あるところには影がある。我々の|非科学的潜在力(ひかり)も地球上すべてを照らせる訳じゃないんじゃ。じゃから多かれ少なかれ影はある。だからと言って、影の部分をコントロールできないと、そこから|精神制御(マインドコントロール)されてしまう。そういうことじゃ』
「もっとうまく恐怖と向き合う必要がある、ということですか」
「おねえちゃんすごいね。そのとおりだよ」
 ハツエは笑った。
 亜夢の指の間に小さな稲妻が走った。
「いてっ…… 静電気かな?」
 亜夢は自身が発したそのちいさな雷には気が付くことはなかった。



 その日は、ハツエの家に泊まることになり、皆が二階に布団を並べた。
 亜夢は端っこの窓際で寝たいと言ったら、アキナが私もそこで寝たかったと言い出して、ババ抜きで抜けた順に寝る場所を決めることになった。
 アキナがカードを配り始めると、一階からハツエが上がってきた。
「なにやってるの?」
 亜夢が内容を説明すると、
「わたしもやる~」
 と言って両手を上げて近づいてくると、美優と奈々の間に座った。
「けどハツエちゃんは一階で寝るんでしょ?」
「ううん。さみしいから上でねる」
 アキナはカードを配るのをやめて言った。
「じゃ、もう一度カードを集めて」
 カードを混ぜて配りなおすと、ジャンケンがで始まる場所を決めた。
「えっ?」
 亜夢はジャンケンでハツエに負けたのだった。
「……」
 亜夢は相手の手を見て自分の出し手を変える。超能力サポートによる超動体視力によって、ジャンケンは負けなしのはずだったのだ。
「ハツエちゃん……」
 亜夢がハツエを見つめると、ハツエはニヤリと笑った。
『おぬしがやれるのなら、儂にやれないわけがないじゃろ?』
 と亜夢へ|思念波(テレパシー)でそう答えた。
「じゃあ、あたしからね」
 ハツエは美優に向かってカードを向けて、美優に一枚引かせた。
 美優はにっこりして手札を並べ変え、一組を真ん中に捨てて亜夢にカードを向けた。
「はいどうぞ」
 亜夢は美優から一枚引くが、何もそろわない。カードを並び替えてアキナにカードを引かせる。
「怪しい。いかにもこの飛び出しているカードが怪しい」
 アキナはそう言いながら亜夢の手札を順番に触っていく。
「怪しくないから」
「跳び出させているなんて怪しいよ。だから、周辺も怪しい」
 亜夢はハツエの視線に気づき、はっと思い出した。
「ちょっとまって」
 そう言ってアキナの目の前からカードを引き上げると、ふーっと息を吐き、目を閉じた。
 カードを一度混ぜてから、もう一度アキナの方に向ける。
「取っていいの?」
 亜夢は静かにうなずいた。
 今度はカードにデコボコはなかった。亜夢の手にあるカードは、なめらかな扇形に並べられていた。
「やっぱりさっきのは怪しかったんじゃん。キレいに並べても亜夢がジョーカー持ってる事実は変わらないから」